儀式の影と解析の光
囚われのイリス ― 儀式の場
祭壇を囲む黒衣の教団員たちは、次々と結晶を並べていく。
鎖に縛られたイリスは身じろぎしながら、少しでも外れそうな緩みを探していた。
(……ここを抜けられれば……)
指先に感じる鉄環の摩耗に希望を繋ぎつつ、耳を研ぎ澄ます。
「儀式は三夜後。
彼女の血を結晶に注ぎ込めば、影の門が開く。」
「門の先にあるのは……“影界”だろう? 瘴気の源をこの大地へ引き込むなど、無謀すぎる……」
「無謀ではない。後ろ盾があるからだ。
――辺境伯の軍資と供物が、この儀式を完成させる。」
その言葉に、イリスの心臓が跳ねた。
(やっぱり……辺境伯が関わってる……! 父上に伝えなければ……)
だが教団員はさらに続けた。
「英雄の血脈を捧げることで、儀式は“完全”になる。
民は絶望し、王都の結界は内から崩れる。」
イリスは目を閉じ、必死に呼吸を整える。
(……三夜後。それまでに……必ず……!)
鎖の僅かな緩みを探しつつ、彼女の瞳には決意の光が宿っていた。
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王都サイド ― 研究塔
一方その頃、王都。
研究塔の最上階では、瘴気を放つ黒結晶を囲んで魔導師団とモルガーナが解析を進めていた。
「……やはり、ただの自然生成物ではありません。」
フェルディナンド卿が震える声で言う。
「結晶は“吸い込み”と“吐き出し”を繰り返している。 まるで心臓……生きているかのように。」
弟子の怯えるメイリアが顔を青ざめさせる。
「ひ、ひぃ……じゃあ、これって……誰かが遠くで操ってるんですか……?」
好奇心に燃えるリネアは逆に身を乗り出した。
「でも、これ……脈動が北西の方向と共鳴してます! まるで“呼び水”みたいに!」
モルガーナの瞳が鋭く光る。
「……つまり儀式が進行している。
黒結晶は“門”を開くための楔にすぎない。」
その瞬間――。
突然、セリオが頭を押さえて膝をついた。
「う、うわああ……っ! ま、また見える……! ……王都の外……北西の空に、翼の群れが……! 黒い炎を吐く、巨大な影の飛竜が……!」
研究塔に一気に緊張が走る。
フェルディナンドが杖を握りしめ、叫んだ。
「王都周辺に新たな魔の群れが現れる……!? 急ぎ、迎撃の準備を!」
モルガーナは低く呟き、弟子たちを背にかばった。
「時間がない……イリス嬢を救い出さなければ、この儀式は完成する。
――影の門が開けば、もう誰も止められない。」
少し変更しました。南の方角ではなく北西に変更しました。




