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不死王レオンとアルヴィス王国物語  作者: スガヒロ
第一章 英雄の血脈 ― 光と影の再会

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宰相の密命

重厚な執務室の空気が沈黙に包まれた。

オルヴィンは机の上の封蝋を一つ手に取り、静かに開封する。

中から取り出したのは、黒い結晶片を封じた小さな箱だった。


「……これは昨夜、王都へ搬入された交易荷から押収したものだ。」

宰相の声が低く響く。

「影晶。奴らがばらまく瘴気の核だ。だが問題は……この荷の“送り状”に、辺境軍の印が押されていたことだ。」


クラリスが目を細める。

「辺境軍……つまりダリオス辺境伯の領から?」


オルヴィンは頷きつつも声を抑える。

「公には発せぬ。だが、妙だと思わぬか。辺境からの補給路を使って影晶が王都近郊に入り込んでいる。

 ……偶然か、それとも意図的か。」


セリオが青ざめ、椅子の背にしがみつく。

「い、意図的って……つまり……裏切り!? そんなの、もし本当だったら……王国が真っ二つに――」


「静かに。」オルヴィンの声が鋭く遮った。

「断定はまだ早い。だが“臭う”のだ。辺境軍は影の教団と通じているのかもしれん。」


レオンは黙って黒い結晶を見つめていた。

その蒼い瞳に、かすかに冷たい光が宿る。

「……証拠は欠片。だが“疑念”は確かにある、ということだな。」


オルヴィンは視線を落とし、さらに囁くように続けた。

「イリス嬢が狙われた理由も、そこに繋がるやもしれぬ。

 “英雄の血”を奪い、王都を混乱させ、その隙に誰かが得をする――。

 ……考えよ、ノエル殿。」


クラリスが口を開く。

「つまり、我々に求められるのは……イリス様の救出と、影の教団の動向調査、そして辺境軍の真意を探ること。」


オルヴィンの瞳がわずかに細められる。

「――その通りだ。表向きは“教団追撃”の命を授ける。だが裏の真実は……貴殿にしか任せられぬ。」


緊張が走る中、セリオだけが震え声をあげた。

「ぼ、僕……帰っていいですか? 裏切りとか陰謀とか、胃に悪すぎるんですけど!?」

クラリスがため息をつき、肩を軽く叩いた。

「セリオ。もう乗ってしまった船よ。逃げ場なんて、とっくにないの。」

「ひ、ひぇぇぇ……!」


そのやり取りに、レオンの口元がわずかに緩んだ。

だがすぐに鋭い光を取り戻し、静かに応じる。

「――了解した。闇の糸を辿り、真実を暴きましょう。」


オルヴィンは深く頷き、封筒を机に置いた。

「ではこれを。密偵の報告と、影晶の流通経路が記されている。……真実に近づけ。」


重苦しい空気の中で交わされたその密命が、やがて王国を揺るがす「影と裏切り」の真実へと繋がっていくのだった。


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