王都の門前にて
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王都を囲む白亜の外壁が、夕暮れの光に染まりはじめていた。
馬車の窓から見えるその姿に、セリオは思わず口を開けた。
「うわ……でっけぇ……! こ、これが……王都アルシオン……!」
クラリスが微笑ましげに横目で見る。
「あなた、本当に王都は初めてなのね。」
「し、仕方ないだろ! 僕みたいな村の書庫番が来る場所じゃ……」
ガタガタと馬車が石畳を進む。門前には列ができており、商人や旅人、そして兵士の姿が入り混じっていた。
いつもの賑わいとは違う。人々の顔には緊張が走り、兵士の検問も普段より厳しい。
「やはり噂が広まっているな。」
窓外を見つめながら、レオンが静かに呟いた。
「英雄の血が奪われた――ただの風説では済まぬ。王都そのものの心臓を揺るがす報だ。」
クラリスが小声で続ける。
「加えて影狼の襲撃……。軍も治安も手一杯のはずです。」
セリオは身を縮めながら、落ち着かない様子で言った。
「ま、まさか僕ら、このまま門で捕まったりしないよな!? “怪しい旅の一行”とか言われて……」
クラリスは吹き出しそうになりながらも真面目に返す。
「安心なさい、セリオ。旦那様は王都随一の宮廷画家、“ノエル”として名が知られているのです。むしろ顔パスですわ。」
「えっ……! そ、そんな有名人と一緒にいたの!? 僕、さっきまで“旦那様”とか軽く呼んでたけど……し、失礼じゃなかったですか!?」
レオンはわずかに肩をすくめ、静かに微笑む。
「敬称にこだわる気はない。――だが、軽く扱ってよい存在でもないことは、忘れぬことだ。」
その声に、セリオは一瞬背筋を正したが、すぐに青ざめて小声で呟く。
「ひぃぃ……やっぱり王様みたいなオーラあるんだよなぁ……」
クラリスが横から軽く肘で突く。
「“みたい”ではなく、本当にそうかもしれませんよ?」
「ええぇっ!? な、なにその意味深な発言ーー!!」
馬車は検問の列へと加わった。
門前の兵士がこちらを睨みつける。
その時、空気を切り裂くような緊張感が三人の間に流れた。
――王都の門が、今まさに彼らを迎え入れようとしていた。




