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不死王レオンとアルヴィス王国物語  作者: スガヒロ
第一章 英雄の血脈 ― 光と影の再会

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揺らぐ均衡を見つめて

馬車の揺れに合わせて、イリスは窓の外をじっと見つめていた。

見えるのは森の闇と、わずかな月光だけ。

だが彼女の心は、遠く離れた王都と、そこで渦巻く政争へと向かっていた。


(……北方連邦。山岳を背にした国々。

 彼らとの交易が絶たれれば、武具も鉄も途絶える。

 東方の森のハイエルフは中立を掲げているが……影に侵されれば均衡は崩れる。

 西の荒野諸国は、常に戦火を孕む不安定な地。

 そして――南方帝国。交易の友好国と見せかけて、覇権を狙っている……)


彼女は父セオドリックの姿を思い浮かべた。

評議会で重鎮たちを抑える威厳ある姿。

だが同時に、その背後で派閥同士が互いを牽制し合っている光景も思い出す。


(外に敵、内に争い。――そんな時に、私が“影”に奪われた。

 これは偶然ではない。王都を揺るがすための、仕組まれた一手……)


その瞬間、脳裏にあの声が蘇る。

――「辺境」という言葉。

囁いたのは、彼女を攫った黒布の男たちの一人だった。


(辺境伯ダリオス……? まさか……。

 いや、証拠もない。ただの思い過ごしかもしれない。

 けれど……影の教団が動く裏に、辺境の力が絡んでいるとしたら……?)


イリスは両手をぎゅっと握りしめ、胸の奥で誓う。

(たとえ囚われていようとも、私はただの象徴ではない。

 ――この国を守るために、必ず真実を見極める。)


馬車は軋みを上げながら暗い森を進む。

夜風が窓をすり抜け、彼女の瞳に冷たくも鋭い光を宿らせていた。

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