焚き火の予言者
焚き火の赤い光が三人の影を長く伸ばしていた。
セリオはまだ肩を震わせながらも、レオンとクラリスの存在に少しずつ安心を取り戻しつつあった。
「……でも、僕なんかが言うことなんて……みんな、厄介者だって……」
セリオがうつむいて呟くと、クラリスがすかさず口を挟んだ。
「厄介者? いいえ、未来を見通せるなんて羨ましいくらいよ。」
「羨ましい……? ぼ、僕は怖くてたまらないんです!」
クラリスはくすりと笑い、肩をすくめてレオンを見やった。
「旦那様なんて、怖いより先にお腹が空いたかどうかの方を気にするんですよ?」
「……クラリス。」
レオンの声は静かだが、微かに呆れが混じっていた。
「私は君の軽口を止めろと言ったはずだが。」
「だって事実ですから。セリオも安心して。怖くなったら旦那様にご飯を与えれば大体落ち着きますから。」
セリオは思わず吹き出した。
「ふ、ふふ……ご飯で……?」
「おい、笑うな。」レオンが軽く眉をひそめるが、その口元はわずかに緩んでいる。
クラリスはしたり顔で頷いた。
「ほら、もう少し楽になったでしょ? 笑えるなら、大丈夫。」
セリオは焚き火の明かりの中で、少し真剣な表情を取り戻した。
「……でも、本当に、僕の“見えるもの”を……信じてくれるんですか?」
レオンはしばし彼を見つめ、静かに言った。
「影を恐れて逃げる者は多い。だが、影を見据えてなお立ち上がれる者は少ない。
君は――その“少ない者”の一人だ。」
クラリスが補うように微笑む。
「つまり、私たちにとっては頼もしい仲間ってこと。」
セリオは驚いたように目を見開き、やがて小さく頷いた。
「仲間……僕が……?」
「そうだ。」レオンが断言する。
「恐怖を知る者ほど、強くなれる。……私がそうであったように。」
焚き火の火花がぱちりと弾け、三人の沈黙を破った。
セリオは少し照れたように笑みを浮かべた。
「……それじゃあ、次に怖いものが見えたら……ちゃんと、二人に伝えます。」
クラリスは嬉しそうに手を打つ。
「いい返事! その時は私が旦那様にちゃんと伝えて、ついでにご飯も用意してあげるわ。」
「……やれやれ。」
レオンは深いため息をつきながらも、どこか満足げに盃を口に運んだ。
焚き火の光に照らされ、三人の間にほんの少し、温かな絆の芽が芽吹いていた。




