空中異変 ― セリオの予兆、紅蓮を裂く影」
〈帝国軍飛行輸送艇〈フレアホーク〉〉
帝国領上空
赤く染まった空を、飛行艇が静かに進む。
火と風の魔石が共鳴し、船体は安定した航路を保っていた。
アリアが計器を確認する。
「……魔力波、安定。推進魔陣も正常稼働中。順調ですね。」
ガイル監察官が頷く。
「この調子なら、あと少しでヴァルハイド上空へ入る。」
クラリス:「静かすぎますわね。帝国の空がこんなに穏やかとは。」
レオン:「……いや、これは“静まりすぎ”ている。」
そのとき――
「ひぃっ……!? ヤ、ヤバいですぅぅ!!!」
突然、セリオが頭を抱えて叫んだ。
全員が振り返る。
イリナ:「ど、どしたのセリオ!? またお腹でも痛いの?」
セリオ:「ち、違いますぅぅ……! “くる”……きます!!
でっかい……黒いやつが……空の下から……!」
アリア:「感応か……!?」
クラリス:「セリオさん、落ち着いて。何が見えるのです?」
セリオ:「黒い……風が逆さに回ってる……
“何か”が……上がってくるぅぅぅ!!」
その言葉の直後――
船体が、ギシィッと軋んだ。
警告音が鳴り響く。
アリア:「っ!? 魔力圧、急上昇――! 魔素の流れが歪んでる!」
ガイル:「制御波乱れ!? 風魔石が逆流しているだと!?」
外の空が、黒く染まり始めた。
雲が逆巻き、炎の赤と闇の黒が混ざり合って渦を作る。
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イリナ:「うわっ!? 何これ!? 雲の中で……何か、動いてる!」
クラリス:「旦那様、瘴気の濃度が急上昇しています!」
アリア:「これ……自然現象じゃない! “影の乱流”よ!」
セリオが震える声で呟いた。
「……くる……! “あいつら”、もう上にいるぅぅぅ!!!」
次の瞬間――
黒い閃光が空を裂き、
翼をもつ影獣の群れが、フレアホークの前方に出現した。
「虚界兵……!? 空域で!? あり得ないわ!」
アリアが叫ぶ。
ガイル:「防御陣、展開急げ! 魔導障壁を三層構築!」
操舵士:「機体がもたない! 風魔石が……逆流ッ!!」
船体が激しく揺れ、甲板に警報が響き渡る。
セリオ:「た、助けてぇぇぇぇぇぇぇ!!」
イリナ:「大丈夫だって! ワタシがぜーんぶ落としてやるヨ!!」
クラリス:「イリナさん!? 冷静にっ!」
イリナ:「冷静だよ!? テンション高いだけっ!!」
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レオンが立ち上がり、船体外縁へ出る。
「……影よ、退け。」
その声と同時に、剣が閃いた。
“封剣アークレイ”の蒼光が走り、黒雲を裂く。
一瞬だけ、空が青く戻る。
クラリス:「旦那様の剣閃が空を断つ……!」
イリナ:「っしゃあ! ワタシもいくヨ!!」
イリナが槍を構え、甲板の縁に立つ。
「星裂槍・ステラ・スローン!!」
星の光が矢のように飛び、影の群れを一掃した。
燃え散る瘴気が空に弾ける。
アリア:「制御陣、安定中……! 火炉出力を五%上げて! 推進波、保持して!」
ガイル:「この乱流を抜ける! 全員、姿勢を維持しろ!」
セリオが恐怖で震えながらも叫ぶ。
「ま、まだ下からきますぅぅ!! でっかいのがぁぁぁ!!!」
船体下方――
真紅の火の海のような瘴気渦から、
巨大な影の腕が伸び上がった。
クラリス:「旦那様っ!!」
レオン:「見えている――!」
刃が閃き、影の腕を一閃で断ち切る。
炎が舞い上がり、空が再び明るくなる。
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アリア:「……乱流、減衰中。……ふぅ、なんとか抜けた……!」
セリオはぐったりと床に崩れた。
「も、もうイヤですぅ……この空、悪意ありますぅぅ……」
イリナ:「ナイス感知だったじゃん、セリオ! アンタいなかったら今ごろ焦げてたかもね!」
セリオ:「褒められても嬉しくないですぅぅ……!」
クラリス:「……本当に、あなたの予兆がなければ危なかったですわ。」
アリア:「そうね。あの“影の乱流”……虚界の干渉が表層まで達してる証拠よ。」
レオンは空を見上げ、低く呟いた。
「――これは、ただの乱流ではない。
“呼ばれている”……誰かが、我々を見ている。」
アリアが顔を上げる。
「まさか……“魔導将級”の力が、もう動いてるの……?」
遠く、黒い雲の中心で――
光のような“眼”が、一瞬だけ彼らを見つめた。
次の瞬間、それは消え、
紅蓮の空に、静寂だけが残った。
いつもありがとうございます。また明日更新します。次回、赤土に落ちる影 ― 緊急着陸と帝国軍の戦術会議




