紅蓮の空路 ― 炎の国を越えて
〈帝国軍飛行輸送艇〈フレアホーク〉〉
――火の谷キャンプ上空。
巨大な鋼翼が、地鳴りとともに浮上した。
船体の下では火の魔石炉が脈動し、赤い光が金属の継ぎ目を走る。
同時に、船尾の風の魔石タービンが青白く輝き、柔らかな気流が全体を包み込んだ。
「すごい……火と風の複合制御式……!
相反する二属性を同調させて推進に転化してるなんて!」
アリアの声が、興奮で弾む。
監察官ガイルが無表情のまま答える。
「新型“フレアホーク改式”。
火の魔石炉で浮遊陣を維持し、風の魔石タービンで推進を制御する。
最高速度は時速百リーグ(約百キロ)。――目的地までは約一時間十七分だ。」
「ひゃ、百リーグって……! 空で!? 速っ!」
セリオは耳を押さえて悲鳴を上げる。
「ボク、空気抵抗とか摩擦熱とか難しい言葉考えると怖くなるぅぅ!!」
イリナは笑って肩を叩く。
「だーいじょーぶ! 落ちる前に着くって!」
クラリス:「その“前に”が一番怖いんですのよ。」
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魔導技師:「魔石炉安定! 浮遊陣起動、推進魔陣展開――!」
船体が唸り、ゆっくりと上昇を始めた。
赤い火流と青い気流が絡み合い、翼の周囲で淡い紫の光を放つ。
浮遊艇は空を裂きながら、灼熱の大地を離れていく。
下方には赤黒い火山帯と、ところどころに光る地脈の亀裂。
遠くの稜線の向こうには、炎と煙が混じる帝国の心臓〈ヴァルハイド〉の影が見えた。
アリアは手帳を開き、ペンを走らせる。
「浮遊陣の安定波長が……すごく滑らか!
風の魔石の供給を火属性で補正してる……!
この理論、私も試してみたい……!」
ガイル:「記録は禁止だ。帝国の技術は機密だ。」
アリア:「(メモりたい……! けど怒られそう……!)」
イリナが覗き込む。
「ねぇアリア、そんなにスゴいの? これ。」
アリア:「すごいなんてもんじゃないわ! この複合魔石構造、理論的に“空間航行”の応用まで可能よ!」
セリオ:「空間……って、どこ行くつもりなんですかぁぁぁ!!?」
クラリス:「……アリアさんが楽しそうで何よりですわ。」
レオンは静かに微笑んで言う。
「知の探究は、どの戦いにも勝る力だ。
――彼女の眼差しがある限り、我々の道も光を失わない。」
アリア(赤面):「……もう、そういう言い方やめてくださいってば……!」
イリナ:「ハハッ、レオン様ってほんとズルい言葉選ぶよねー!」
クラリス:「(ズルいのは貴女の距離感ですわ……)」
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◆ 帝国の空を越えて
フレアホークは高度を上げ、雲の層を突き抜ける。
視界の先に、赤と黒の海が広がる――
無数の火山と、そこから立ち上る紅の煙柱。
「これが……帝国の大地……」
クラリスの声がわずかに震える。
アリア:「火山の一つひとつが“魔力の脈”と繋がってる。
つまり、ここ全体が巨大な魔導炉なのよ。」
イリナ:「国全体が機械みたいなもんか。そりゃ熱いワケだね!」
セリオ:「ボク、溶けてなくなる夢を見そうですぅ……」
船体が緩やかに旋回し、機関音が低く唸る。
下方では、熔岩の流れがまるで血管のように光り、
その奥に、紅蓮の光が瞬いた。
アリアが眉をひそめる。
「……見えますか? あの光脈。
聖樹イグニアの封印層、波形が乱れてる……!」
クラリス:「旦那様、封印の軋みが始まっているかと。」
レオンは剣の柄に手を添え、目を細める。
「……行こう。炎の鼓動が止まる前に。」
イリナ:「よっしゃー! 燃える展開キター!」
セリオ:「アツいのはもう十分ですぅぅぅ!!」
輸送艇〈フレアホーク〉は速度を上げ、
紅蓮の風を切って帝国の心臓部――〈ヴァルハイド〉へ。
火と風が共鳴し、
空を駆け抜ける光の軌跡が、まるで彗星のように輝いていた。




