転移陣の遺産
王都の喧噪を背に、レオンとクラリスは人目を避けるように裏路地を進んだ。
やがて辿り着いたのは、王城の地下深くに隠された古い石室――かつて悪魔王を討った仲間たちと共に設置した「転移陣」の一つが眠る場所だった。
クラリスが静かに問う。
「……この術式を、また使われるのですね。」
レオンは頷き、石床に刻まれた古代文字へ手をかざした。
「我らが戦の後に残したものだ。限られた者しか知らぬ抜け道……。
ここからなら、ルデリア村近くの“廃神殿跡”へ飛べるはずだ。」
石室の空気が震え、光が走る。
転移陣の円環が淡い蒼光を帯び、空気が揺らめいた。
クラリスは剣を握りしめ、微かに笑みを浮かべる。
「――便利ではありますが、毎度心臓に悪い移動です。」
「慣れぬままの方が、きっと良い。」
レオンは軽く目を細め、転移陣の中央に歩みを進めた。
「この力が“過去の仲間たちとの秘密”であることを、忘れぬためにな。」
蒼白の光が二人を包み込み、王都の喧噪は一瞬で消え去る。
残されたのは静寂と石室のみ。
次に彼らが踏み出した場所は――
影狼が暴れるルデリア村から、ほど近い廃墟の中だった。




