暫定対策 ― 錬金術師ミュリオの実験帳
暫定対策 ― 錬金術師ミュリオの実験帳
〈帝国東領・前線野営地〉
聖堂奪還から一夜。
レイヴンたちは、帝国軍の臨時基地で休息を取っていた。
焚き火の光に照らされ、蒼く光る〈ルミナ・シールド〉が中央に置かれている。
その周囲で――ミュリオが何やら怪しい器具を並べていた。
ミュリオ:「ふっふっふ……錬金術師ミュリオ・ラスターン、天才の出番ですねぇ!」
ヴェイル(眉をひそめて):「お前……何をやる気だ?」
ミュリオ:「決まってるじゃないですか。**“ルミナ・シールドの光を再現する”**んですよ!」
リスティア:「えぇぇ!? そんなことできるんですか!?」
ミュリオ:「理論上は、ですけどねぇ!」
ティル=アクエラ(青ざめて):「理論上という言葉が一番怖いのですけれど……」
レイヴン:「やるなら慎重にしろ。
あの槍は、聖樹の加護そのものだ。扱いを誤れば――」
ミュリオ:「どっかーん!って爆発ですかね!」
全員:「やめろーーー!!」
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錬金実験 ― “光の模倣”
ミュリオは机に鉱石と聖水を並べ、ルミナ・シールドの光を水晶に反射させる。
光が分光し、青白い波紋が地面を走った。
ミュリオ:「なるほど……この波長……普通の“聖光”じゃない。
“対虚界干渉波”だ!!」
リスティア:「たい……きょかい……なんですか?」
ミュリオ:「つまり、“影”そのものを拒絶する光ですよ!
これを人工的に再現できれば――小型でも“影を断つ”武器が作れる!」
ヴェイル:「おい、本気でやる気か?」
ミュリオ:「本気ですとも!
天才が一晩でやること、凡人は百年かかるんですよ!!」
レイヴン:「……結果が出るなら構わない。ただし、命を賭けるな。」
ミュリオ:「任せてください! 死なない程度に死ぬ気でやります!!」
ティル=アクエラ:「それ矛盾してますよぉぉぉ!」
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ミュリオは魔導陣を描き、錬成台に鉱石を乗せた。
「“光精蒸留式・模倣構築――ルミナ・エコー起動!!”」
パァァァッ―――!
光が走り、場の空気が震えた。
リスティア:「わぁっ、すごい! 小さい光の槍が!」
ヴェイル:「おお……見た目だけなら本物みてぇだな。」
ミュリオ:「ふっふっふ……これが“模造光”。
ただし、持続時間は十秒! 威力は雀の涙! でも、理論は証明されました!!」
レイヴン:「十分だ。
その光があれば、我らも“影を払う”ことができる。」
ミュリオ(涙目):「ひゃっ……ひゃいっ!! 褒められたぁぁぁ!!!」
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帝国副隊長レオニードが歩み寄り、模造光を見つめた。
「この光……我々の“聖印兵装”に組み込めるかもしれん。」
ミュリオ:「ええ! 錬金触媒を介せば、三分程度は持続できるはずです!」
リスティア:「じゃあ、帝国兵にも使えるように……?」
レオニード:「そうだ。
あの“影の執行者”に再び襲われても、今度は逃げるだけでは済まん。」
レイヴンはルミナ・シールドを見つめた。
「……この槍が示しているのは、“光の原理”ではなく、“意思の在り方”だ。
影に呑まれぬ意志を持つ限り、人は抗える。」
リスティア(小さく微笑む):「……だから、レイブン様は強いんですね。」
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深夜 ―
ミュリオはルミナ・エコーの結晶を見つめ、うなる。
「……でも、あの執行者ヴァルドラの再生能力。
あれは単なる影再構成じゃない。
“虚界そのものの魔力”で再誕してる……」
ティル=アクエラ(隣で記録をつけながら):「つまり、模倣光では完全に消せない……?」
ミュリオ:「そう……。
本物のルミナ・シールドにある“聖樹の核反応”が必要。
これを再現するには、別の聖樹――“炎”か“大地”の力を組み込むしかない!」
ヴェイル(テントの外から顔を出して):「おい、徹夜すんなよ。
お前の天才、燃え尽きたら困る。」
ミュリオ(ニヤリ):「大丈夫ですよ。
天才は燃えてるうちが一番輝くんです!」
外では夜風が鳴り、遠くで“影の気配”が再びうごめいていた。
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リスティア:「ミュリオさん、もう寝ましょう……。
明日からまた戦いです。」
ミュリオ(ぼそりと):「……うん。
でもね、リスティアちゃん。
本当の天才っていうのは――世界を救う瞬間に笑える人なんですよ。」
その瞳に、炎のような決意が宿っていた。
ルミナ・エコー ミュリオが錬金術で作り出した光結晶。短時間だけ“対影干渉波”を発生させる。完全再現は不可能だが、臨時的な防衛装備になる。
帝国兵装改修計画ミュリオと帝国工兵隊が協力して、帝国軍の兵装にルミナ・エコーを埋め込む計画。




