建国するにあたって
「俺も詳しくは聞かされてないんですけど、ネモフィラ嬢の婚約は、父親であるカルム伯爵が、カルム領をカルム国として認める条件の内の一つだったんだと思います」
「……」
「カルム国が出来たら、父は元老院で役職に就くと言ってました──キース様は、エリオット様を探しているのでしょう? あの二人のどちらかだったら、不味いかなと思いまして」
「そうか──そうよね。それにしても、ジェイドはどこまでいってもジェイドよね。もともとのネモフィラ嬢が、どんな性格だったのか知らないけど、私にはジェイドにしか見えないわ」
「ネモフィラ嬢は、普段は奥ゆかしい女性なのですが、学友の内のどちらか一人なんて選べないって思って悩んでたんです。どっちも選べないなんて、俺からしてみたら贅沢な悩みですけどね」
「立ち入ったことを聞くけど、奥ゆかしい女性が、そんな感じで大丈夫なの?」
「あ!!」
「今度は何?」
「思い出しました!!」
「何を?」
私は嫌な予感がしつつも、ジェイドに聞き返した。今、知らなくてもいいことなのかもしれないが、いずれ聞かなければならない話なのだろう──何となくそう思った。
「この世界観、どっかで聞いたことあると思ったら、従兄妹のノンちゃんから聞いたゲームの内容と一緒です!!」
「もしかして白薔薇の第3シリーズ?」
「違います。ノンちゃんは腐女子だったので、乙女ゲームなんか、やりません」
「まさか……」
「はい。BLゲームです」
私は、まさかの展開に眩暈がしそうになりつつも、聞き返した。
「えっと、オメガバース設定の?」
「いえ、そんな名前では無かったと思います……」
「どんな内容なの?」
「俺はやってなかったんで、あんま覚えてないんですけど、確か主人公がアーリヤ国の王子で、相手役が騎士と宰相、それから商人と魔術師──だったような? すみません。はっきりとは覚えてないんです」