エピローグ
エドガーが消え、ジュールがいなくなって数ヵ月たった、ある晴れた日――青い空に白い雲が浮かび、平和な日々が続いていた。けれど、それもいつまで続くか分からない。
魔族は滅びたわけではない。そんな中で結婚式を行うのは気が引けたが、王族に生まれた以上、それも責務だと思って乗り越えるしかないだろう。
城へ持ち帰った魔素回収装置は、ジークの手によって解体されていた──報告によると、ネモフイラ嬢の住んでいる屋敷の裏に咲いていた大量のリリカルによって、回収した魔素は全て解体され、処分されたとのことだった。
「ユリウス、二度目の結婚式ね。正直に言うと、私はもう、結婚することはないと思っていたのよ」
「私もだ。君と二度も結婚できるなんて、私は何て幸せ者なのだろう」
ユリウスはそう言うと、私の額にキスをした。
「わたしも、ユリウスと結婚出来て嬉しいわ。前世と立場は逆になってしまったけど、この世界が続く限り──あなたの立場を守り、私は貴方を支えます」
「私も、全力で君を守ると誓うよ」
「それでも、命はかけないでくださいませ」
私が前世に言った言葉を思い出しながら言うと、ユリウスは笑っていた。
「懐かしいね……。誓うよ。君のために私は死なない。必ず君のそばにいる」
「愛しているわ、ユリウス」
「私も愛しているよ、キース」
どちらからともなくキスをすると、会場からは歓声が上がった。城に併設された礼拝堂で私たちは結婚式を挙げていた。
「ユリウス・マーベル──病める時も健やかなる時も、夫として愛し敬い慈しむ事を誓いますか?」
神父の言葉に私達二人はうなずいた。
「誓います」
「キース・カルム──病める時も健やかなる時も、妻として愛し敬い慈しむ事を誓いますか?」
「誓います」
「えーコホン。もうしてしまっているが、いちおう誓いのキスを……」
「はい」
顔から湯気が出るほど恥ずかしかったが、私たちは再びキスをした。会場からは拍手が聞こえる。
「これで二人は正式な夫婦となる。これからも頑張りなさい」
そう言われ、神父へ振り向くと、そこには何もないのに、何故か懐かしい気配がした──気のせいだろうか?
「まさか、ノーム様?」
「──何を言っているのかね?」
「すみません、私の勘違いです」
会場を出た私達は、結婚式に集まってくれた国民へ手を振ると、ユリウスと共に停車している馬車へ乗り込んだのだった。
それから馬車に乗り、街中で行われるパレードへ参加したのだった。




