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元王子様の登場

 私達の下にあった魔術陣は消え、エドガーは洞窟の前から飛び上がって空中に浮かんでいた。私は立ち上がり、立ち去ろうとしているエドガーへ向かって叫んだ。


「私は諦めない……」


「エドガー! 世界を崩壊しなくてもいい方法は、本当にないのか?」


「ないさ」


「考え直して欲しい。世界が崩壊したらサミューもいなくなるんだ」


「分かってる。サミューの事は言うな。あの子は関係ない」


「関係ないって、娘じゃないか……」


「……」


「……」


 エドガーが腰につけていた剣を鞘から引き抜こうとしたとき、再びユリウスが私の前に躍り出た。


「ランブレ、アクアフルーレント!」


「うぁぁぁぁぁ……」


 エドガーは、ユリウスの光魔術により消滅していた。身体に掛かっていた負荷が無くなり、歩けるようになると、自然と身体はユリウスのいる方へ向かっていた。


「ユリウス!」


「陛下、間に合って良かったです」


「空を飛んで来たの?」


「ええ。先に転移したはずの陛下達と連絡が取れなくなっておかしいと思ったんです。そしたら、スピンズ様が転移陣ではなく空から行こうと仰って──風魔術を使って、空を飛んできたのですよ」


「ありがとう、ユリウス」


「いえ、陛下のためですから」


「……エドガーは消えてしまったわ。幻影の魔術だったのかしら?」


 私が独り言のように呟くと、ジークがこちらへ来て言った。


「いえ、あれは分体です。分身の魔術と言って、幻影の魔術のように見えたかもしれませんが、他に分体があるため消えてしまったのでしょう」


「分体?!」


「それよりも陛下、ジュールが……」


 後ろを振り返ると、ジュールが力尽きて倒れていた。ユリウスが首を横に振っていることから、もう亡くなっているのだろう。


「ジュール……」


「陛下」


「ジュールは、何も悪くなかったわ。ただ操られて──でも、生きていて欲しかった」


 ユリウスは何も言わずに私をただ抱きしめていた。


「必ず、魔族へ復讐するわ」


「陛下、憎しみからは何も生まれませんよ」


「いいの。これは、私の個人的な感情だわ。でも国王としては、正しくありたいの。ユリウス、私の側にいて。側にいて──支えてくれる?」


「もとより、そのつもりですよ。今も昔も、この先もずっと……」


 そう言ったユリウスと見つめ合うと、どちらからともなくキスをしたのだった。




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