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応用術

 今まで何処に居たのか、突如として現れたエドガーは魔術を放った。すると、放った魔術に重なるように周囲から光が飛び交い、上乗せするような形で魔術が形成され、空中から地面に何かが放たれた。


 収束して一気に放たれた魔術は、エドガーがもう一度、呪文を唱えると空中で分岐し、森の中へ落ちていった。


 ────ドォォォォォン


 地鳴りがして、突風が吹くと森に緑の光があふれていた。


「なに、これ……」


「陛下、おそらくは鍾乳魔石がある場所へ魔術を放ったのでしょう。調査隊から報告を受けた場所に、魔術が放射線を描くように落ちていきましたので」


「じゃあ、なに? 鍾乳魔石が全て解放されて森に魔素が溢れ返っているの?」


「おそらくは……」


 私は世界の終わりが足音を忍ばせて、近づいているのを感じていた。


「少し息苦しくなってきたわね」


「陛下、大丈夫ですか? 城の方がいくらか魔素が薄いと思われます。一度戻って対策を立て直しますか?」


「いえ、大丈夫よ。たぶんだけど、城へ戻っても問題は解決しないでしょう」


「陛下?」


 ジークが、こちらを怪訝な表情で見ていた。私は不安な表情を見せてはいけないと思っていたが、もう限界だった。気がつけば、ユリウスが隣へ来て私の手を握っていた。


「姉上! いけるかもしれません」


「スピンズ?」


「森にある魔素は、まだ広まっていません。先日、僕が発明した魔素回収装置ですが、回収した後なら、転移魔術を使って他の場所へ移すことは可能です。魔素を消滅させることは出来ないのですが……」


「他の場所? そんな、別の国に魔素を撒く訳には……」


 私が困り果てていると、ジークが傍へ来て言った。


「陛下、私に策があります」


「何? 言って!」


「先日、ある研究していて気がついたのですが、ある植物に魔素を混ぜると、魔素が消えました」


「植物に混ぜると魔素が消える?」


「リリカルはご存じですか?」


「ええ。催眠薬に使われている花よね?」


「先日、リリカルの葉をすり潰して、魔素溜まりの中へ入れると魔素が消えているという研究結果が出まして──」


「え?」


「正確には別の物質に変わるので、消えたように見えるだけなのですが」


「じゃあ、リリカルがあれば何とかなりそう?」


「どうでしょう? 量が量ですからね。いったん城へ持ち帰っても、よろしいでしょうか?」


「分かった。この件はジークに任せるよ」


「ジーク様、すごい……」


 何故かスピンズ王子が、目を輝かせてジークを見つめていた。


「……」


 それに対して、私とユリウスは何も言えなかったのである。




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