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森に潜む魔族

「姉上! 森が大変なことに、なっています。見たことのない植物や生物ならまだ分かるのですが、少し先に新しく川が出来ました」


「……そう」


 私は識る力を使い続けたせいか、体力が限界に近かった。額に流れる汗をユリウスが隣で拭っている。


「ジーク、あとどれくらい?」


「確かなことは言えませんが、ほとんど終わっているものと思われます。あと少しでしょう」


「あと少し、ね……」


 私は深呼吸をしながら、少しずつ魔石の魔力を吸収していき、最後まで吸いとることに成功したと思われた、その時だった。


「姉上! また森が大変なことになっています」


 通信器から聞こえたスピンズ王子の声は、かなり切迫していた。


「スピンズ、何があったの?」


「森が──森が光っています」


「え? 森が光る?」


 私は前世で見たアニメ映画で、森と共に生きる少女と呪いを解くために旅をしている青年が出てくる映画の話を思い出していた──あれ? 森が光った後って、呪いが解けるんだっけ?


「スピンズ、今そっちへ行くわ」


 私は疲れて座り込んでいた身体を無理矢理起こすと、ユリウスと一緒に洞窟の外へ出たのだった。



*****



「姉上、何してるんですか? こっちです」


 空が光って、スピンズ王子の姿も見えにくくなっていた。光りが眩しすぎて、周りの様子が良く分からない──私は転移陣の前にいるスピンズ王子の元へ歩いていった。


「スピンズ、何があったの?」


 私達は、空から射してくる光に目を眇めながら、森の中で立ち話をしていた。


「分かりません。ただ、空で光っているあの光は、私達が洞窟から放出した光の魔術とは違うようです」


「──違う魔術? まさか?!」



 私がそう言った瞬間、空が光った。空が煌めいた後、雲が空から無くなり──青い空には無数の虹が煌めいていた。


「あまねく大地を導く土の精霊よ、空を舞う風の精霊よ──我らは、そなた達の契約者なり。共に歌い、共に舞い、共に生きる道を捨て、滅することになろうとも、我らは新しい未来に誓う。いけ──ウォールウィンドクラッシャー」


 光が収まり、空に浮いているエドガーが呪文を唱えているのが見えたが、私はなす(すべ)もなく、ただ魔術が放たれるのを眺めていることしか、出来なかった。




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