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世界を救う

「うわっ、凄いわね」


 洞窟へ辿り着いた私達一行は、先に来ているジークの元へ歩いて行ったが、鍾乳魔石の近くはジークの荷物や魔術具で散らかっていた。


「ジーク。どうして、こんなにたくさん荷物を持って来たの?」


「備えあれば憂いなしです。どれだけ時間が掛かるか分かりませんし、森の中で食料は貴重ですから」


「えっ、食料? 食べ物も持ってきたの?」


「陛下は、今回の作戦をどの様にお考えですか? 世界を巻き込む爆発ですよ?」


「ええ、分かってるわ。でも、時間はそんなにかからないと思っていたの」


「陛下が一気に吸収して、外へ放出する事がどのようなことになるか分かりませんし、身体にもかなりの負担がかかりますので、一気に放出するのは禁物です。気をつけてください」


「そのあたりは、インフェルノで少しは感覚が掴めていると思うの。問題ないわ」


「だったら、良いのですが……」


「ジーク、準備が終わったよ」


 既に準備に取りかかっていたスピンズ王子から、からくり箱型通信器へ連絡が入った。


「前に使ってたものと同じもの? すごいわね。いつの間に作ったの?」


「昨日、徹夜して作りました。スピンズ様の為ですよ」


 よく見れば、ジークの目の下には(くま)が出来ていた。この人は、私が側にいると知らず知らずの内に目の下に隈を作っているな──そう思いながら、鍾乳魔石の様子を見に行った。


「昨日と変わりないみたいね。ジーク、この装置は?」


「コリアリティを使って、鍾乳魔石から魔素を吸収できるようになった際に、識る力で吸収しきれなくなってしまった魔素を吸収する装置です。何が起きるか分かりませんからね。高濃度の魔素を含む空気の中に長時間居続けると倒れると聞いたことがあります。洞窟の中に魔素が溢れかえった状態で作業を続けると命に危険があるかもしれません。あの針が50を超えたら一旦作業は中止して、地上へ出ましょう」


 私は隅に置いてあるラジカセの様な魔術具を見た後に、壁にかかっている湿度計のような魔術具を見た。まだ何も始めていない今の段階で、魔術具に埋め込まれている測量具の針は5の数字を指していた。


「今の10倍になると不味いのね」


「それすらも分からないのですが──単なる私の推測です。連絡が取れなくなったら、助けを呼ぶようにと、スピンズ様には伝えてあります」


「いまいち実感がわかないけど、何だか私たち、今から世界を救うみたいね」


 私がそう言うと、ジークは何故かため息をついていた。


「いいですか。陛下が失敗をすれば、この国だけでなく世界が滅びます。今までやってきたことも全て無意味になってしまいますし、魔族だけでなく人族も滅びます」


 ジークに言われて初めて実感が湧いてきた。


(世界を救う? 私にそんなことが出来るのだろうか?)


「陛下、陛下ならできますよ」


 ユリウスが後ろから、そっと私を抱きしめていた。


「ありがとう、ユリウス」




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