コリアリティ
城へ着いて数日後──私達は魔の森にある洞窟へスピンズ王子とジーク、それからユリウスと一緒に来ていた。洞窟の出口には、一緒に来た近衛兵が数名待機している。
「姉上、すごいですね。この石──魔石ですか?」
「鍾乳魔石というらしいの。この石に魔力を注ぎ続けると爆発すると言われているわ。ジークの話だと1年以内に爆発する可能性が高いらしいの」
「鍾乳魔石……。姉上、この石から魔力を吸いとることは出来ますか?」
「えっ? それが、出来ないのよ。最近になって使えるようになった魔術なのに、なんで識る力のことを知ってるの?」
「ジーク様に聞きました」
「……そう」
「エドガー殿も、ご存知でしたよ」
「え? あれから会ったの?」
「一度だけです。彼らは、自分の命と引き換えてでも、この世界を救おうとしているみたいでした。滅ぼすことが世界のためだと、本気でそう思っているようです」
「私には、それを黙って見過ごすなんてことなんて、出来ないわ」
「姉上は相変わらずですね。僕は、彼らの邪魔をしたくは無かったのですが、仕方ありません。別の手立てを考えましょう」
「協力してくれるの?」
「ええ──でも、何かが出来るとは限りません。何も出来ないかもしれませんよ?」
「スピンズなら、やってくれると信じてるわ」
「姉上、記憶が戻ったのですか?」
「全然」
「そうですか。ちょっと、見てみますね」
スピンズ王子はそう言うと、近くまで行って鍾乳魔石を観察していた。
「確かに魔力がかなり溜まっていますね。自然な魔素を取り入れたとはいえ、ここまで溜まるには、少なくとも数千年かかるでしょう」
「そんなに?!」
「自然が作り出した物ですからね。これを取り除ける可能性がある物は、コリアリティくらいでしょう」
コリアリティとは、この世界でいうところの分解液体だ。あらゆる成分を分解して自然に帰すことから別名、クラッシャーと呼ばれている。




