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「ちょっと待って。話を整理するわ。魔族は、悲観した精霊の共鳴を少なからず受けていて、それに同調した人達が城を出ていったって──そういうこと?」


「陛下、さすがです。概ね合っています」


「それで? 魔族は何をするつもりなの?」


「このままでは、森や魔族、人族までも滅んでしまいます。そうなる前に、どうにかして爆発を止めようとしているのではないかと……」


「こう言っては失礼かもしれないけれど、人族のために命を差し出すような人達には見えなかったわよ」


「私達のためではありません。契約している精霊のために、彼らは動くのです」


「まあ、それはそうよね──そう言えば、ジーク。以前、魔力を封じ込められる亜空間を作ったわよね。あれは、どうなってるの? 亜空間に魔力を封じ込められるのであれば、鍾乳魔石も亜空間に閉じ込めておけないかしら?」


「陛下、それは私も考えたのですが──色々と問題がありまして。まず一つ目に、鍾乳魔石が魔の森の何処に幾つあるのか分かりません。師団員を派遣しましたが、全て見つけるまでに爆発してしまう可能性が高いでしょう。二つ目に、鍾乳魔石が大きくなりすぎて地中に埋もれていることです。こちらは数メートル掘り下げて、亜空間に閉じ込められなくはないのですが、時間がかかるのと、いつ爆発するか分からない場所で作業を続けるのは、危険が伴います。誰もやりたがらないでしょう」


「そう──でも二つ目は、私に出来そうかしら?」


「陛下。以前に陛下の魔力で作った亜空間でさえ、一日半掛かった魔術です。陛下がその気でも、側近としてやらせる訳にはいきません。それに、簡単に亜空間に閉じ込められるとか、思わないでください」


「じゃあ、弟に協力を頼んでみる?」


「スピンズ様ですか──私は構いませんが、協力してくれるでしょうか?」


「え?」


「私が知る限り、キース様とスピンズ様は、そんなに仲が良くないように思われたのですが──でも、確かに未知の魔術に触れられる機会があれば、一も二もなく彼は飛んでくるでしょうね」


「第1王子が即位したら、スピンズ王子をこっちへ連れて来れないかしら?」


「それは無理でしょう。アーリヤ国の王子ですよ? 現王からすれば、いくらでも使い道はあるでしょう」


「それも、そうよね。普通にお願いするしかないか」


「それがいいでしょう」


「ジーク、転移陣を用意してもらえるかしら?」


「アーリヤ国へ向かうのですか?」


「ええ、スピンズ王子を連れてくるわ」


 ジークは、魔術陣の用意を始めると失笑していた。私は何故笑っているのか分からなくて首を傾げた。


「相変わらずですね、陛下。次に何をしようか分かっている時点で、私も大概だなと思いましたが……」


「なに言ってるの。私が次に何をするか分かるなんて、優秀な部下だと思うわ。ちょっと、正直すぎるけど」


「ええ、そうですね。ありがとうございます」


 ジークの含み笑いに気をとられながらも、私は用意してくれた転移陣の上に乗ったのだった。


「ありがとう、ジーク。すぐに戻ってくるわ」


「お気をつけて」


「ええ──」


 私は転移陣の光に包まれると、アーリヤ国へ転移したのだった。




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