共鳴
「国王だから危険だって言うの? でも、国民の命がかかっているのよ? 何よりも優先すべきことだわ」
「ええ」
「確かに、そうですが……」
ユリウスとジークは、再び顔を見合わせると再び笑い合っていた。
「それとは、別に一つ気になる事があります」
「何かしら?」
「魔族ですよ。始めは協調性を見せていた魔族が、急に手のひらを返したように態度を変えた──変だと思いませんか?」
「確かに変だと思ったわ。亜空間から出て人族と共存すると言っていたのに──それは、嘘だったのかしら? 裏切られたと思ったのよ。いくら情に疎いからって、やっていいことと悪いことの区別くらいつくでしょう?」
「まあ、そうでしょうね。そうだと思います。ですが魔族は、精霊と契約を結ぶと言われています。一人前になった魔族は、精霊と契約して一部の感情を共有することで、より魔術を高めると言われています」
「え? 共有?」
「彼等は、その事を『共鳴魔術』と呼んでいます。感覚を同じくすることで、魔術師としての感覚を、より研ぎ澄ますことが出来ると――そんな話を聞いたことがあります」
「共鳴することが、何か関係あるの?」
「精霊は自然の中に生きています。彼等は何かを事前に察知し、滅びゆく世界に悲観し、絶望しているのではないかと思いました」
「その絶望が、魔族と共鳴してしまって、影響を与えてしまっているということ?」
「個人的な推測ですが、もし共鳴魔術の影響下にあるのなら、精霊達は自分達の思いを、シンクロさせているのかもしれません」
「ちょっと待って。話について行けないんだけど……」
「禁忌魔術です。意識を同調させて、同じ考えを相手に刷り込ませるのです。必ずしもそうだとは言えませんが……」




