以前に来たことのある場所
私達は、屋敷の地下にある地下通路を通って、再び魔石のある場所へ向かった。以前に来た時よりカビ臭かったが、そんなことは気にしていられない。薄暗い中を前へ進む。
「エドガーは、鍾乳魔石が自然発火するようなことを言っていたけれど、前に見た時は、そんな風には見えなかったのよね」
「陛下は、この洞窟へ来たことがあるんですね? その時と今で、何処か違うところはありますか?」
「違うところ? うーん……。あると言えばあるけど、無いと言えばないかしら? そもそも、鍾乳魔石自体、私は見てないのよね。あの時は、見かけなかったし」
「──陛下、誰かいます」
私達は人の気配を感じて、鍾乳魔石のある入り口の少し手前で立ち止まった。鍾乳魔石にロウソクの光が反射して、ユラユラと影だけ揺れているのが、少し手前から見ているだけでも分かった。
「もしかして、ジーク?!」
ジークの姿が見えると、私は鍾乳魔石のある場所まで駆けて行った。
「陛下。どうしてここに…─」
「それは、こっちのセリフよ。もしかして、反対側から来たの?」
「はい。前に来た時、洞窟から出た方より入ってきました。縄梯子しか無かったので、焦りましたけど」
「二人で洞窟に行ったんだ。ふーん……」
「ユリウス、小さな塔を見つけた時の話よ? ユリウスに前に話したでしょう?」
「でも、洞窟では二人きりだったんだろう?」
「うっ……」
今、こんな所で前世の話を持ち出されても困る。そう思っていると、ジークが隣で咳払いをしていた。
「ユリウス、陛下とは何もありませんでしたよ。まぁ、私が外の様子を見に行っている間に居眠りをされた時は、流石にどうしようかと思いましたが」
「ジーク!!」
「冗談ですよ」
「冗談って──何もそんなこと、ばらさなくても……」
「そうか。陛下とは何も無かったのか」
ユリウスの笑顔に、私は何も言えなくなってしまったのだった。




