第3王子
魔女の屋敷へ戻り、馬でユリウスと一緒に城へ帰ると、ジークが出迎えてくれた。
「陛下──ご無事で、何よりです」
迎えに出ていたジークは、少しやつれていた。前世で常にやつれていたのを思い出し、少し申し訳なく思っていると、他のメイドや従者がやって来たので、話を聞きながら城の中へ入った。
「心配を掛けて、すまない」
「陛下。一体、何があったのです?」
「それが……」
私は意識を失ってから、村へ連れていかれ──空間魔術をミランヌ村の村長が使用したいと言っている話をした。ジークは額にシワを刻みながら、私の話を聞いていた。
「空間魔術ですか……」
「それについては、第3王子のスピンズに頼んでみようかと思うんだ。会ったことはないが、仲が悪かった訳では無かったみたいだし」
私は久しぶりにノーム様からいただいたミニノートの内容を確認していた。兄弟は兄が一人に弟が一人だと書いてある。アーリヤ国では、私が男性という設定になっているので、スピンズ王子は、実際には第2王子だが、表向きには第3王子ということになっている。
「うーん、スピンズ様ですか?」
「何か問題があるの?」
「いえ、特には……」
私達が執務室で話をしていると、先に戻っていたユリウスが、青い顔をしながら、こちらへやって来た。
「ユリウス?」
「何があったんだ?」
「今、カルム伯爵に呼び出されて行ったのですが、もの凄く怒っていて……」
「もの凄く怒っている?」
「娘の婚約者が、まだ決まっていないと。約束と話が違うと仰っていました」
「あ……」
魔女との一件で、すっかり忘れていたが、カルム伯爵は娘がユリウスかジークのどちらかと婚約する事で、元老院へ入り、カルム領を手放す事を承知していたのだ。国が建国されてしまった今、婚約者が決まっていないのは非常に不味い。
「陛下、その様子では忘れておりましたね?」
「すまない……」




