友との再会
兵士達の働きにより、すぐに馬車は通れるようになった。馬車が動き出して、3時間ほどでカルム領へ到着した。
アーリヤ国の東に位置するカルム領は、自然が豊かで気候が安定している土地だ。私は森を抜けた先に、いつも見ていた城が見えると思っていた──けれど、実際には何もなかった。
私は再びノートを開き、内容を確認していたが、起こった出来事が前後して書かれているばかりか、小さいノートに文字がびっしりと書かれていて、読むのに時間がかかっていた。
最近、事件が起きて私が不祥事を起こしたらしい。けれど、国王は私を廃嫡するどころか、新しくつくる国の国王にするという。不祥事を起こした娘を国王にするなんて正気の沙汰じゃない。
(そればかりか、私は男装をしている。どういうことなの?)
私は思わず自分で自分の胸を触って、女性であることを確認した。
(そう言えば、禁書庫へ行った時にエリオット様が何か言ってたわ)
そうこうしている内に、現場を見に行っていたユリウスが馬車の中へ戻って来て言った。
「陛下、ジーク様が挨拶をしたいと申して言おります。一度、外へ出られますか?」
「ああ」
私は男性の振りをしなければならないのかと思い、低い声を出してみたが、ユリウスに笑われてしまった。
「陛下、無理に男性を演じる必要はございません。初めは陛下の身を守るためについていた嘘でしたが、今では側近のほとんどが、陛下が女性あることを知っています」
私は羞恥で顔を赤くなるのを感じながらも、ユリウスの手を借りて馬車を降りた。城が建つはずの場所には、骨組みと基礎部分しか出来上がっていなかった。
その骨組みの上に、肩まで髪を伸ばした茶髪の青年が立っている。
「魔術師のジーク・コックス様です」
「ああ」
「キース、やっと来たか。待ちくたびれたぞ」
「キース様とは、乳兄妹なんですよ」
親しげな言葉遣いに私が戸惑っていると、ユリウスが近くに来て、こっそり教えてくれた。
「ああ」
「お前──『ああ』しか言ってないぞ? どうかしたのか?」
「それが、何も──思い出せないんだ」
「??」
「陛下は、どうやら事件より前のことは、何も覚えておられないようなのです」
いつの間にかユリウスが側へ来て、彼の疑問に答えていた。
「実は事件の後の事も、よく覚えていないんだ」
「それは……」
「すまない。昔のことは何も思い出せないんだ──君のことも」
「良いんじゃないか。新しく国をつくるんだ。何も思い出す必要はないだろ?」
「そうか? ありがとう、ジーク様?」
「ほんとうっに、何も覚えてないんだな? その、ジーク様ってのやめろよ。気持ち悪いから」
「……」
「ジークだ」
「え?」
「お前は、俺のことジークって、呼んでたぞ」
「ジーク?」
「何だ?」
「これからも、よろしく」
「おう、その意気だ」
彼が拳を突き出したので、私も同じように拳を突き出した。すると、建国への誓いを立てるかのように、お互い拳をぶつけ合った。ぶつけ合ったら、意外と痛くてお互い顔を見合わせると、笑い合ったのだった。