四角い魔石
水が湧き出てくる場所を探すために、私達は地下通路を歩いて行った。歩き続けていると、来たことのある──といっても、前世の話だが、平坦な道の先にある二股の分かれ道へ辿り着いた。
右に行けば出口があると分かっていたが、右へ行くためには水路を横切らなければならなかったため、私達は左の通路へ進むことにした。
左の通路を進むと、舗装されている地下通路から、鍾乳洞のような岩肌が露出している場所へ出た。頭上からは、細長い岩が伸びてきており、そこから雫がしたたり落ちていた。その雫の先には、大きな四角い岩がある。
「え──石? 違うわね。魔石?」
近くまで行ってみると、その石は内側から鈍く緑色に光っていた。
「キース様、ここへは来たことがあるのですか?」
「以前に、ちょっとね」
私の言う以前が、前世であることに気がついたのか、ユリウスは半眼でこちらを見ていた。
「それよりも、この石──魔素が込められているみたい。自然に出来たものなんでしょうけれど、魔素を吸いとる力があるみたいなの」
私が試しに炎の球を石に向かって投げてみたが、石は損傷するどころか、炎を吸いとるように吸収した。
「不思議ですね。魔の森に、このような物があるとは、思いもよりませんでした」
「私もよ、ユリウス」
私は前世でプレイしていたゲームを急に思い出していた。乙女ゲームやBLゲームでもない、モンスターを倒す、RPGゲームの内容である。ゲームでは、モンスターを倒すと魔石が出てくる。
モンスターを倒した報酬だとずっと思っていたが、モンスターが敵にやられたことによって、魔石になったのだと後から聞いて、そんなバカな設定があるか──と思ったのを、覚えている。
「この大きな四角い石は、誰かが意図的に置いた物かしら? だとしたら、誰が何のために……」
魔石は普通の石とは違う、魔力を持った石だ。自然の力でこんな大きな魔石が出来るなんておかしいと思った。
「陛下? そろそろ帰りましょうか?」
一人で呟いていると、後ろから来たユリウスに、背中をそっと支えられた。
「そうね。ジークが心配するわ」
「ジュール様も、心配していると思います」
そう言ったユリウスは、私から僅かに視線を逸らしたのだった。




