屋敷の調査
エドガーに、亜空間の外まで送り届けてもらった後、私は魔女の屋敷へ向かった。泉の前に人影を見つけて、繁みの中から様子を伺っていたが、少しづつ近づいていくと、それがユリウスだと分かった。
「ユリウス!!」
思いきって足を踏み出し、声を掛けると、ユリウスはこちらへ振り返った。
「キース様!!」
駆け寄って来て私のことを抱きしめるユリウスを見て、そう言えば、前にもこんなことあったような──気がしていた。
「心配をかけて、すまない」
「……とにかく、無事で良かった」
エドガーの話では、7時間も経っていないということだったが、ユリウスはもの凄く心配していた。
「本当にキース様なんですか? 今まで、どこにいらっしゃったんです?」
「いろいろあってね。その話は、あとで。ジークは、どうしてる?」
「すごい剣幕で城へ帰ってきたかと思えば、血相を変えて『陛下が何者かに連れ去られた』と言っていたので、私はひとまず、状況を見に戻って来たんです。ジークは、何か探索できる魔術具を開発しようとしていましたが、陛下の魔力は測量器で感知できないとか何とかと言って……」
「そうだったの。それにしても、何だか急に暗くなってきたわね」
さっきまで薄暗かった空が、暗くなってきていた。
「急ぎ城へ帰りましょう」
ユリウスがそう言った瞬間、魔女の屋敷からコウモリが飛び立った。
「きゃっ……」
「コウモリを飼っていたんですかね。とにかく、急ぎましょう」
ユリウスにそう言われたものの、私は魔女の屋敷から微かに光る緑の光が気になっていた。
「屋敷にコウモリなんて、おかしいと思わない?」
「思いません。魔女の屋敷ですから」
「ユリウス、やっぱり先に帰っててくれない?」
「陛下。何を仰っているのです?」
「私、目の前にある問題を放っておけない性分なの」
「そうでしょうね。でも、今のところ、問題は起きていません」
「問題がありそうな事については、深く調査するべきだわ」
「……」
私がそう言うと、ユリウスは何も言わずに、立ち去ろうとした。
「待って。何処へ行くの?」
「……魔女の屋敷です」
「ありがとう。ユリウス」
私達2人は、正面玄関から魔女の屋敷の中へ入ったのだった。




