ユリウスの限界
「うわっ──ホントにすごいですね、キース陛下の魔力は。確かに桁違いだ」
ジークは受け取った魔力を確かめるように、自分の手のひらを握ったり開いたりしていた。
「これで、何とかなりそうです」
「何とかなるって?!」
「ヒールエレメント!!」
ジークは、自分の手のひらをジュールへ向けると魔術を放った。すると、息を引き取ったかに見えたジュールが、息を吹き返したのだった。
「……生き返ったの?」
「まさか。私にそんな力はありませんよ。ギリギリ間に合っただけです。あとは、ジュール殿の生命力ですかね」
「本当に? よかった……」
「水龍の陣について少し研究する余地があるようです。それとは別に──湧き出てきている水ですが、おそらく治癒の効果がある水だと思われます」
「治癒? 水は何処からか、湧き出ているの?」
「おそらく、地下水ではないかと……」
「井戸は造れないかしら? 治癒の効果があるのなら、近くの住民がケガをした時に使えていいんじゃない?」
「出来ないことはないですが、噂が広まれば悪用されかねないかと」
「それなら、結界を張るのはどう? 悪意がある人は入って来れないようにするとか」
「試してみます。あの、キース様。私はもう魔力が……」
「もちろん──付与するわ」
その光景を見ていたユリウスが、急に口を開いた。
「あの、キース様。私は城へ帰ってもいいでしょうか?」
「どうしたの? ユリウス」
「私は、もうこの場所に必要ないかと思われます」
「え?」
「捕らえた魔女を連れて、近衛兵と共に城へ戻ります」
「待って、ユリウス!!」
「すみません。私がいけないんです。私が未熟だから、余計なことばかり考えてしまって──すみません、失礼します」
ユリウスは、それだけ言うと、近衛兵と魔女を抱えて城へ帰っていった。
「ユリウ……。一体、どうして?」
「陛下? あの、結界についてですが──」
ジークの声に我に返った私は、自分で自分の頬を叩き、気合いを入れた。
「ごめんなさい。ボーッとしてたわ。泉の結界の話よね?」
「もともとある魔術陣を囲うように、防御結界を張りました。これで、滅多なことがない限り、無関係の者が陣の中へ入ってくる事はないでしょう」
「そう」
「陛下? 少しお休みになられたほうが──」
「いいえ。そうも言ってられないわ。泉の整備を進めましょう」
私がそう言った瞬間、後ろから現れた影に抱きしめられた。殺られる──そう思った時には遅かった。
「キース様!!」
何者かに抱きしめられた瞬間、意識を失ってしまった私は、その場に崩れ落ちるように倒れたのだった。




