古の魔術と魔術具
──魔女がそう言ったその瞬間、魔女はジークによって拘束された。
私の後ろからついて来ていたと思われたジークは、いつの間にか魔女の背後へ回っており、気がついた時には、魔女を捕らえていた。
「何をするんじゃ、離せっ」
「悪いが、一緒に城へ来てもらう」
私がジークの手際の良さに感心していると、ジークが魔封じの手枷を魔女に嵌めていた。魔女は顔を歪め、無理やり立ちあがると苛立ったかのように、足を踏みならした。
「召喚!! 二つの水龍!!」
地響きがしたかと思えば、屋敷の後ろにある泉から、龍の形をした水の塊が二つ現れた。
よく分からないが、どうやら魔女が足を踏みならしたことにより、魔術が発動して、水龍が現れたようである。
「何をする?!」
「それは、こっちのセリフじゃ!!」
ジークは魔女と揉み合いながらも、予備の手枷を魔女の足に嵌めていた。その間にも、水龍はこちらへやって来て、口から氷の塊を吐き出していた。
「危なっ……」
何度も攻撃してくる水龍の氷の刃を避けていたが、近くに転がっていた氷の塊に躓いてしまった私は、尻もちをついていた。
「キース様!! 爆裂火炎魔術!!」
ユリウスは私の前に出ると、水龍へ向けて手を翳し、私が付与した魔術を放っていた。全てを焼き尽くすような炎の魔術に、水龍と氷の魔術は全て溶けていた。それと同時に、周りにあった氷も全て溶けている。
「ユリウス、頼む!!」
ジークは、手枷と足枷を嵌めた魔女を、更に縄で巻いていた。こちらへ転がって来た魔女は、気絶したのか意識を失っている。
ジークは、そのまま泉へ駆けていくと、泉の底に描かれていた魔術陣を見ていた。
「どうやって、これを描いたんだ。いや、待てよ。これは……」
「ジーク、どうかしたのか?」
「陛下。この魔術陣、水龍の召喚魔術陣となっておりますが、術の応用で変換出来るタイプのものだと思われます」
「変換?」
「古の魔術で、応用魔術があったのは覚えていますか?」
「いや……」
「簡易的な魔術陣に、後から術を加える魔術です。色々問題があって、前世では禁忌の魔術に指定されていましたが、この時代では禁止されていない」
「ジーク、まさか……」
「この魔術陣に干渉します」
そう言うと、ジークは懐から取り出たペンで、側に別の魔術陣を描いていった。
「それは、魔術具?」
「はい、この時代にしかない魔術具です。ペンで書き加えることによって、二度と召喚できないようにすることも可能です」




