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息子

「キース様!!」


 ユリウスに引きとめられ、後ろから抱きつかれた。途端に、張り詰めていた緊張感のようなものから解放される。何かに囚われていたと気がついた時には、ジュールの微笑みは消えていた。


 呆気にとられていると、屋敷の入り口から魔女が現れた。魔女は、ジュールの後ろに寄り添うように立っている。


「ジュールの魅了魔術が効かないとは、お前は一体、何者だ?」


「キース・カルムです。それ以外の何者でもありません」


「いや、違う。ジュールの記憶を覗いたら、以前は効いていたのじゃ」


「私が誰であろうと、あなたには関係ありません。私の部下を返してください」


「ジュールを? ジュールは私の息子じゃ。私が自分の息子をどうしようと私の勝手じゃ」


「息子?」


「ああ。私が拾って、私が育てた。ジュールは忘れているがな。途中で侯爵家に引き取らせたのじゃ──新国王は薄情じゃの。ジュールを捨てて、あっさりと別の男に乗り換えた」


「そんなつもりは……」


「記憶喪失だったか。本当にそうなのかも、怪しいもんじゃ。のぅ、ジュールや」


 よく見れば、ジュールの瞳は虚ろだった。何も見えていない様子に、心が痛む。今まで操られていたのであれば、私への好意も嘘だったということになる。


 そう思ったら、返してなどと言えないと思った。それを悲しいと思うのは、私がジュールを好きだったからだろうか。いや、そんなはずは……。


「キース様」


 ユリウスが隣で私の名前を呼んでいた。いつの間にか繋がれていたユリウスの手を握り返すと、私は魔女へ向かって言った。


「ジュールは、物ではありません。例え、あなたが母親でも、好き勝手に使うなんておかしい──返してください!!」


「私から精神支配を受けているジュールが、お前の所へ帰るはずがない」


「ジュール、帰りましょう」


 私はジュールへ向かって、手を伸ばした──ジュールは私の差し出した手を掴もうとして、払いのけてしまう。


「キース様、逃げて……」


「ジュール!!」


「おのれ、ジュール。私の精神支配を何度も解呪するとは──この、出来損ないめ!!」




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