術の範囲
魔の森へ着くと、識る力を使って片っ端から魔素を吸収していった。無謀かもしれないと心のどこかで思っていたが、自分に出来る1番の方法だとも思っていた。
「ウィンドフリッティング!!」
吸収した魔素を魔術へ変換して、風魔術を放ち、上空へ風を巻き起こした。木の葉が空へ舞い上がっては、舞い降りてくる。何度も吸収して放出するうちに、小さな風が互いに影響し合ったのか、小さな竜巻が出来上がっていた。
「うそ……」
私は風がこちらへ向かって来るのを、ただ呆然と見つめることしか出来なかった。
「モラリム ウォール!!」
いつの間にかユリウスが後ろにいて、私が突風に巻き込まれないように、土壁を作ってくれていた。もともとユリウスに貸していた魔術具には、それぞれの属性を少しずつ付与していたのだ。
「ユリウス……」
「陛下。1人で森の魔素を全て吸いとるなんて無謀過ぎます。今すぐ対策を立て直しましょう」
「でも、ジュールが……」
「陛下が、そのような状態では、魔女の思うつぼです。あなたは、自分の体力が尽きるまで、森の魔素を吸収し続けるつもりだったのですか?」
そうだ。もともと無尽蔵にあるような気がしていたキースの魔力量は、底なしではない。いくら多いからといっても、森の魔素を全て吸いとることに魔力を使い続ければ、全て吸いとる前に力尽きてしまうだろう。
少し考えれば分かることだったが、ジュールがいなくなって、少し冷静さを欠いていたようだ。
「対策を立て直します。一度、城へ戻りましょう」
「そうですね。その方がいいでしょう」
私はユリウスの手を取ると、馬に乗って城へ戻ったのだった。




