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消えた幻影

 「この先を少しだけ見てくる。ユリウスは、ここにいてくれ。ジーク!!」


「はっ!!」


「陛下、お気をつけて。少しでも危ないと思ったら、すぐに戻ってきてください」


 私は心配そうなユリウスを置いて、泉があると思われる方向へ歩いて行った。右の道へ進むと、目の前に小さな小屋が現れた。


 驚いて立ち止まってしまう──隣にいたジークは、耳打ちするような声で「戻りましょう」と私に言った。


 その時、目の前にある小屋のドアが、音もなく開いた。


「「!!」」


 小屋の中から出てきたのは、小学生くらいの女の子だった。小首を傾げてこちらを見つめている。


「地図に載ってなかったし、こんな場所に家なんてなかったわよね? また幻影の魔術? 見破られると分かっていて、性懲りもなく……」


「キース様、お待ちください!!」


 ジークが止めに入る前に、私はクッキーの粉末を、女の子へ向けて投げかけた。すると、粉末は当たらずに家や少女をすり抜けていった。


「よく見てください。あれは、幻です。何処かに魔術具を置いて、映像だけを流しているのでしょう」


 暫くすると少女は家の中へ入り、再び出てきた。どうやら、家の中から外へ出る動作を繰り返しているようだ。


「魔術具なら、識る力を使ってなんとかなりそうね」


 目の前にある家の近くまで行くと、近くに緑の光が見えたので、それに触れた。すると、幻は消えて今度は目の前に木々や、奥へ続く道が現れた。


「ごめんなさい。クッキーの粉末を、かなり使ってしまったわ。それにしても、これは──罠かしら?」


「どう考えても、罠でしょうね。一度、戻りますか? 負傷はしておりませんが、騎士達もおりますし……」


「そうね、そうしましょう」


 私は帰ろうとしたが、消えた幻が気になって、もう一度よく見てみた。けれど、そこには何も無かったのである。




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