泉へ
次の日の朝早く、私達3人は泉へ向けて出発した。影と呼ばれる護衛が後から数名ついてきているとジークは言っていたが、私には分からなかった。
泉へ向かう馬車の中で、私はジークが即席のアイデアで作ったという、ブレスレット型の魔術具を受け取っていた。
識る力の魔術を溜めておける魔術具は、以前と同じ形をしていたが、身につけて魔術をブレスレットへ収めると少し身体が楽になった。
私は練習を兼ねて、2人に炎系統の魔術を付与した。単純に炎の魔術の方が攻撃にはいいのではないかと思って付与しただけではあったが、2人のテンションは、かなり上がっていた。
「キース様、まだ使う前ですが、あり得ないくらい強力な魔術だというのは、私にも分かります」
ジークが、少し興奮した様子で、話をしていた。
「その魔術は、キースのもともとの魔力量が多いから出来る魔術なのよ。完全に私の魔術って訳でも無いような気がしてるわ」
「そうなのですか? 私は付与されたという実感が、あまりないですね」
一方、ユリウスは手のひらを見つめて、不思議な顔をしていた。
「ユリウスの使える魔術は何なの?」
「光と風──それから、前世での水魔術が少し使えます」
「炎の魔術を使ったことがないのね。それなら、使えない属性の魔術は、威力が感知出来ないのかも。もともとの威力が、すごいから気をつけて」
「気をつけるとは?」
「思いきり使うと、周りの人を巻き込む可能性があるわ」
「そうなんですね」
私の言葉を聞いて、ユリウスは少し青ざめていた。
「大丈夫よ。水を汲みに行くだけだし」
「ええ」
少し不安そうにしているユリウスと、興奮気味のジークを連れて、森の奥にある泉へ向かった。




