明日に向けて
夕方前には帰って来るはずの兵士達は、夜になっても帰って来なかった。窓の外は既に暗い。
何も出来ずに、ただジュールを看病をしていたが、彼の顔が次第に青ざめていくのを側で見ているのは忍びなかった。
「帰って来なかったみたいね」
「魔女の仕業でしょうか?」
ユリウスの言葉に、ジークは腕を組みをしながら考え込んでいた。
「分かったわ。私が汲んでくる」
「「は?」」
「キース様。あなたが行けば、確実に魔女に狙われます。分かっているとは思われますが、城で待機してるのが賢明な判断です」
「そうかもしれない。でも、部下が苦しんでいるのを、ただ黙って見過ごす訳にはいかないわ」
「それなら、私が……」
「ジークは、記憶が戻ってから全属性が使えるようになったと言ってたわね。でも、魔力量は少ないんじゃない?」
前世で圧倒的な力を持つ魔術師団団長オーベル様の技術や魔力に比べると、今のジークの実力は半分以下だった。
「でも、魔術の知識だけは誰にも負けません」
「知識だけで、魔女に勝てるの?」
「それは……」
「キース様、ジークをあまり苛めないであげてください」
「じゃあ、どうするのよ……」
私は次第に具合が悪くなっていく様子のジュールを見て、頭を悩ませた。
「キース様、私が一緒に行きます」
「ユリウス……」
「後でこっそり出掛けられても困りますし……」
「私もお供します。魔術を付与していただければ、即戦力くらいにはなるでしょう」
「ジーク、ありがとう」
「出発は明日の朝にするとして、今から作戦を立てましょうか」
「ええ」
それから私達は、泉に向かうルートや魔女対策について、それぞれの意見を出し合い、話し合って、明日の出発に備えたのだった。




