暗殺される理由
「先代のアーリヤ国王の王妃と側妃は、全て魔女に暗殺されてしまったのですが、魔女がやったという証拠は見つかりませんでした。それで、魔女は証拠不十分で釈放されてしまったのです」
ジークの言葉に私は何も言えなかった。
「……」
「そのせいかは分かりませんが、国王はその後、妃を娶ることなく自分の息子へ地位を譲ったそうです」
「魔女は、どうしたのかしら?」
「噂によると、魔女は森の中にある自分の屋敷へ帰って、復讐の機会を伺っていたそうです」
「復讐って、何の?」
「先代国王の愛情が向かう先の、全てのものに対してです」
「待って。訳が分からないわ」
「国王は妃を娶らない代わりに、自分の娘を溺愛しました。国王を引退してからは、更に娘を可愛がるようになり、噂に尾ヒレがついたほどです」
「まさか、その時の王女に呪いを掛けて、今も呪われ続けてるってこと?!」
「おそらくは。王女はもういないのですが、魔女も年なので、記憶があやふやになっているのかもしれません」
「そんなことって……」
「魔族は、長生きする種族のせいか、情に疎く、固執すると変な方向に突っ走る傾向にあります。人族と何度も戦になり、絶滅してしまったのも、それが原因の1つと言われております」
「そこまで固執するなんて──よっぽどだったのでしょうね」
「それでも、王女が亡くなったのであれば、呪いは解けていても、おかしくはないと思うのですが……」
「呪いは、何故か次世代にまで引き継がれたって訳ね。それとも、キースがそう思っていただけ?」
「分かりませんが、王子だと思われていたのなら、普通に暗殺されそうになることもあるでしょう。もしくは、何か理由があったとか」
「暗殺される理由?」
「何か心当たりはありますか?」
「ないわ。というより、記憶がないから分からないの」
「そうですか──今日はもう、明日に備えて休みましょう。他の方も、それで構いませんね?」
「「承知致しました」」
ジュールとユリウスはジークの言葉に同意すると、机の上に置いてあった書類を片付けて、私達と一緒に部屋を出た。




