消去法?
サイモンが消えた日から2週間がたった頃──私とジーク、それからユリウスはネモフィラ嬢の屋敷に集まって、作戦会議を開いていた。
キースに掛けられた呪いを解くことが出来なければ、再び命の危険にさらされる事にもなる可能性があり、再び周りに被害が及ばないとも限らなかった。それに、魔女が直接攻撃しに来ないとも言いきれない。
「キースだった時に、呪いが解けなかったんだもの。きっと、解呪薬は効かなかったのよね?」
「ええ。魔族の呪いは強烈で、威力は人間の100倍と言われています。人間が作った解呪薬では効きません。魔力量や魔術も、人族とは桁違いです」
今日は、ユリウスに護衛という名目で部屋の外に立ってもらっていた。ユリウスの前で転生前の話をする訳にいかなかったし、そういう話になった時、話の流れで私がボロを出すかもしれないと思ったのだ。
「やっぱり、ジーク様がオーベル様だったんですね。最初から、そうじゃないかと思ってたんです」
モネは嬉しそうに笑うと、縦ロールの髪を揺らしていた。
「えーと、その、立ち入った事を聞くようだけれど、ジークはその──前世では、ネモフィラ嬢と……」
「キース様。ジェイド──ではなくて、ネモフィラ嬢とは何もありませんでした。これからも、何もありません」
「えー!! せっかく女性に転生したのに……」
「えー、じゃありません。じゃあ、お聞きしますが、キース様は姿形が変わったからといって、好きでもない人を愛せますか?」
「それは……」
「キース様が、サイモンを好きになれなかったのと同じです。私は好きでもない人と、結婚は出来ません」
「でも、オーベル様──じゃなかった、ジーク様。消去法で考えたら、俺とジーク様が結婚するしか無くないですか?」
モネは、こちらを見て微笑んでいた。何を言っているのか、さっぱり分からない。
「消去法?」
────コン、コン、コン
その時、私達が話していた応接室の扉をノックする音が聞こえた。




