呪われた王家
「それで、前カルム国王の妃だった魔女が、私を殺しに来るわけね。わけが分からないけれど」
「彼女は、自分の寿命を削って、王家に呪いをかけたそうです。そのせいで、王家に生まれる女の子は、長生きできないと言われています」
「それで、キースは男装をしていた訳?!」
「たぶん、そうなのでしょう。カルム国王は自国の領土の一部を独立国家にして、キース様をカルム国の国王に仕立て上げようとしているのですから」
「カルム国の王になれば、呪いからは解放されるってことかしら──そんなに上手くいく?」
「分かりませんが、国王が考えられる最善の策だったのでしょう。アーリヤ国でのキース様は、魂の抜け殻みたいになっていましたし、暗殺からお守りするのは、大変だったんですよ? 主に、ジークが何度か死にかけました」
「何も覚えてないけど、一応お礼を言っておくわ。ありがとう」
「いえ。覚えていないのに、お礼は結構です。ところで、先ほど転生する際に色々あったと言っていましたが、何かあったのですか?」
私はオーベル様の実験室で毒キノコを食べてから、転生するまでの話を、オーベル様に話して聞かせた。
「なるほど。本物のキース様だった時より、魔力を少なくして、識る力を残したのですね。それが、魔女に知られていないのならば、好都合です。切り札になるかもしれませんから、そのことは周りに伏せておきましょう」
「ええ。この時代にも、幻影の魔術はあったのね。クッキーの粉末以外にも、見破れる方法があれば良いのだけれど……」
「そういえば、識る力をもってしても、幻影の魔術は分からないんですね?」
「たぶん、闇の魔術だからよ。闇の魔術は私には分かりづらいし、幻影の魔術自体、人を惑わせる効果があるから、見ても魔術が使われているのか、ほとんど見分けがつかないの」
「そうですか……」
「あの、オーベル様?」
「他の人達が、そろそろ戻ってくる頃でしょう。ここでは、ジークでお願い致します」
「あの、ジークはネモフィラ嬢のことをどう思って──」
「キース様!!」
私がネモフィラ嬢の話をしようとすると、ジークは声を荒げた。
(そんなに、ネモフィラ嬢との婚約話をしたくないのかしら?)
騒ぎが落ち着き始め、避難した人達の誘導を終えたユリウス達が、こちらへ戻ってくるのが見えた。
「まあ、いいわ。また今度」
「ええ。胃が痛くなるので、その話はしばらく無しでお願いします」
ジュールとユリウスは私を心配しつつも、誰にもケガが無かったことを喜んでいた。




