異世界転生のやり直し
「キースの魂だ。キースは、このあと混乱して世界を滅ぼしてしまう。それを防ぐために、そなたを呼んだのじゃ」
「滅ぶ? でも、まだ未来は決まっていないですよね?」
「いや──この世界は、既に366回創造を繰り返している。しかも毎回、躓くところは一緒だ」
「だからと言って、私が代わりに国王をやる訳にはいきませんよね? 私が未来から来たのなら、ほっといてもどうにかなるのでは?」
「残念ながら、それはない。時の神、ヴァーチェも、今のところ滅ぶ未来しか見えないと言っている」
私は地の精霊ノームの手の上にある、小さな白い渦を見つめた。
「その、手のひらの上にあるキース王は、どうなるのですか?」
「それなんだが、異世界へ転生させることが、先ほど十二神会議によって決定したのじゃ。今回は、それを伝えに来た」
「え?」
「でも記憶が無いと、それはそれで──そなたも困るであろう? 精神崩壊しかけている奴の記憶をそのままにして、魂を移すのは危険じゃからな。それで特別に、わらわがキースとその側近の関係性を書いたノートを用意したのじゃ」
「え? ありがとうございます?」
私は小さな手帳サイズのノートを受け取ると、ついつい御礼を言っていた。
「では、後は頼む」
「えっ、ちょっと待ってください。えっと、私は──エリオット様と結婚した後も、騎士団長の後任が見つからなくて、忙しくしていたオーベル様の──確か、実験の手伝いで、研究室へ行ってオーベル様を待っていたはずです。待ちくたびれて、ジェイドと2人で、魔の森で採れたというキノコを食べましたが──あ!!」
「ようやく気がついたか。そうだ、そのキノコの毒によって、そなたは亡くなったのじゃ」
「でも、毒キノコなんかじゃありませんでしたよ? 同じものを、いつも食べていましたし」
「あのキノコは、魔素を多く含むと毒を生成する、毒キノコだったんじゃよ」
「まさか、魔素が増えたことによって、魔素を吸収して毒キノコになったってこと?!」
「その通りだ。アイリス・グレイとしての生を終えなければ、こちらへ呼び戻すのは不可能だったからな。思ったより早くこちらへ戻って来ることになって、わらわも驚いておる。一緒に居たジェイドも、こちらの世界へ来ておるよ」
「ジェイドが?」
「ああ。どっちかって言うと、ついて来たみたいな感じだがな」
「あの、エリオット様は私がいなくなった後、どうしていましたか?」
「それなんじゃが……」
「……」