サイモンの正体
「サイモン?!」
「いや、思ったより気がつくのが早かったのぅ」
サイモンがいた場所には、見知らぬ初老の女性が立っていた。顔を上げると、不気味な笑い声を立てながら手を振り上げた。
「爆裂火炎魔術!!」
「爆裂火炎魔法逆行!! 特殊結界防御魔法!!」
「小癪な……」
髪を振り乱したおばあさんは、ジークの魔術をはね除けると、不気味な笑い声を残して消えていった。
「転移魔術?! 魔術陣を使わずに、一体どうやって──というより、今の魔術って……」
「……」
「まさかとは思いますが、ジークがオーベル様ですか?」
かなりの確信を持って聞いたのだが、ジークは怪訝な顔をした後、手のひらを上へ向けて肩をすくめた。
「ファイナルアンサー?」
「ふざけてる場合じゃないでしょ?!」
「お久しぶりですね、アイリス様」
未だ会場は混乱していたが、久しぶりの再会に、私達は思わず笑い合ったのだった。
*****
「前から思ってたんだけど、幻影の魔術は識る力を使っても、分からない時は分からないのよね」
「サイモンは、魔術を使って姿を変えていました。それが、どういうことかお分かりですか?」
「いいえ、全く」
「キース様が、女性なのに男装をしている理由は?」
「分からないわ。色々あって、私はキースだった時の記憶がないのよ」
「先代のアーリヤ王は、色男だったらしく、綺麗な女性は片っ端から手を出していたそうですね」
「最低ね」
「そうかもしれません。これは、噂で聞いた話なので真実なのかは分かりませんが、アーリヤ国の国王の子供は呪われていると言われています」
「呪われている?」
「はい。先代の妃の中に、魔女が紛れ込んでいたらしく、気がつけば魔女以外の妃は、秘密裏に殺されていたそうです。日本で暮らしていた時に、魔女狩りの話を聞いたことはありませんか?」
「あるわ。確か、罪のない女性が魔女ではないかと疑われたあげく、たいした証拠もないのに、処刑されてしまった話よね」
「この世界の魔女は、《《本当の》》魔女です。今から約1000年前まで、魔族という種族が生きておりました。絶滅したと言われておりますが、彼女はその生き残りでしょう」
「絶滅したのよね?」
「ええ。ですから、彼女が最後の生き残りではないかと──魔族の寿命は1000年と言われております」
「1000年?!」
「長く生きているからなのか、情に疎い者が多かったみたいです。そのせいで、人族と対立することも多く、魔族とは戦争になることが多かったと聞いております」




