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人材の確保

 扉を開けると、ジークが申し訳なさそうな顔で、ネモフィラ嬢の前へ立っていた。


 私が廊下へ出ると、ネモフィラ嬢が綺麗な淑女の礼(カーテシー)をしていた。中身がジェイドだということを、少し忘れそうになってしまう。


「キース様。お忙しいところ、申し訳ありません。先ほどネモフィラ様が到着されたのですが、私はこれから他の領地へ視察に行く予定が入っておりまして──ネモフィラ様のご案内を、どなたかへお任せしても、よろしいでしょうか?」


 そういえば先日、モネから『新しい城を見学したい』という内容の手紙が来ていたわね──それとは別に、ジークから他の領地へ視察に行きいという相談を受けていた。優秀な人がいたらスカウトしたいという申し出は、こちらからしてみれば願ってもない話だ。新しい城の人手不足は、かなり深刻な状況である。


「隣のアシュラ領だろう? いいよ、私が案内する。アシュラ侯爵に許可は取ってあるから、必ず優秀な人材を見つけて、連れ帰って欲しい」


「はい」


 ジークは騎士の礼をすると、踵を返して走り去っていった。ジークの姿が見えなくなると、ネモフィラ嬢は頬に手を当てて、あからさまな溜め息をついた。


「逃げられましたわ」


「いや、まだオーベル様と決まった訳じゃないでしょう?」


「ほぼ確定です。怪しい動きをしていますもの」


「仕事へ行っただけだから、そのうち、戻ってくるよ」


「そうですわね」


「あの、キース様?」


 そんな話をしていると、いつの間に部屋から出てきたのか、サイモンが後ろに立っていた。


「えり……」


「サイモン?!」


 モネがエリオット殿下と口走りそうになっているのを全力で阻止した私は、サイモンの名前を叫んでしまい、逆に驚かれてしまった。


「えり?」


「襟が出てるよ、ほら、そこ!!」


「すみません、後で直しますね。あの、そちらの方は?」


「申し遅れました、私、ネモフィラ・カルムと申します」


「もしかして……」


「ああ、カルム伯爵の娘だ」


「左様でございましたか。私は、このたびキース様にお仕えすることになりましたサイモンと申します。キース様に、このようなご令嬢がいらっしゃったとは──いやはや、キース様も隅に置けないですね」


「サイモン? 何を勘違いしているんだ?」


「何って……」


「サイモン様? 陛下は女性ですよ?」


「え?」


「??」


「えええええ────!!」


 部屋の前の狭い廊下に、彼の絶叫が響き渡った。




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