新しい側近候補
「ダメだ」
後からやってきたユリウスは、彼の前で腕組みをすると、追い払うように手を振った。
「俺はキースに聞いてるんだ。キースの方が偉いんだろ? それなら、決定権はキースにあるはずだ。俺を雇ってくれ」
「そういうのは、まず面接してから、どこに配属になるか決まるんだ。陛下の側でお仕えするのは、貴族って決まってるんだよ」
「じゃあ、城で働くのは諦めるから、俺を専属商人にでもしてくれよ。その方が会えそうだし」
「いや。えーと……」
迫り来る笑顔に私は何も言えなくなっていた。それに、私のことを男だと思っているなら、やり過ごせるような気がしていた。
「陛下? 陛下もハッキリ断ってくださいね!! 見た目がタイプだからって甘い態度をとらないで下さい」
「いやっ、タイプなどでは……」
ユリウスの言葉に虚を突かれて、シドロモドロの反応しか出来なかった私に、サイモンは畳みかけるように言葉を紡いだ。
「俺が側にいれば、疲れたときに、いつでもマッサージしてやれるぞ? 計算も得意だから、教えてくれれば書類仕事も出来るし。昔、執事見習いをしていた時もあるから、侍従の仕事も出来ると思う」
「えっ?! そんなに出来るの??」
「どうだ? 雇いたくなっただろう?」
(この人の中身はエリオット様では無さそうね。でも、側にいれば何か手掛かりが掴めるかも)
「見習いとして働いて、ジークとユリウスが貴方を認めたら、採用を考えてみてもいいわ。どう?」
「陛下? 彼だけはダメです。どうか、お考え直し下さい」




