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街の自警団

 サイモンに案内されて、街の外れにある一軒家の中へ入ると、中は作業場みたいな造りになっていた。カーテンの仕切りの先にある奥の部屋へ行くと、ジュールがベッドの上に横たわっていた。


「ジュール!!」


「大丈夫です。眠っているだけで、命に別状はありません」


 側にいた白衣を着た初老の男性は、そう言うと眉根を寄せていた。もともと痩せていたジュールは、この1週間で更に痩せ細っていた。


「今朝、見廻りをしていた街の自警団が、川に飛び込む彼を見つけて、慌てて引き上げたんです。川に流されて意識を失っていますが──彼は、あなたの部下でしょうか?」


「え、ええ……」


「何があったのかは知りませんが、栄養失調にもなりかけてますよ。それ以外は問題ありませんが、処置が早かったのでこの程度で済みました。出来るだけ気をつけて、見ていてあげてください」


「分かりました」


「他の診療がありますので、これで失礼致します」


「ありがとうございました」


 医者が帰ると、入れ替わりにサイモンがやって来た。サイモンは、難しそうな顔をして、こちらを見ている。


「その人は、キース様の知り合いなのか?」


 ユリウスに指摘されたのか、サイモンの言葉遣いは丁寧になっていた。


「この場では、キースでも構わない。敬語もいらない」


「いや、そうじゃなくて──そいつは婚約者か何かだったのか? うわごとで、『キース、ごめん』とか、言ってたからさ」


「違う、婚約者じゃない」


 私は冷たくなったジュールの手を取ると、握りしめた。手の冷たさに、生きている辛さを突きつけられている気がして、切なくなった。


「キースには俺がついてるからさ、元気出せよ」


「サイモン?!」


「何か一目惚れみたい。この間、家に帰ってから、キースの顔が頭から離れなくてさ。でも、ユリウスから聞いた。キースは、国王なんだってな。伴侶とかは無理でも、キースの側にいて役に立ちたい」


「何を言って──商人の仕事は?」


「店を畳むよ。どうせ、そんなに儲かってなかったし」


「いや、ちょっと待って。それは……」


 新しく建設された城の人材が不足しているのは問題だと、かなり前からユリウスやジークから指摘されていた。


 しかし、彼が城にいたらいたで、今度は私が仕事に集中できなさそうだ。見た目がエリオット様の青年からの申し出に、私は固まってしまっていた。




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