再開
再び目を再び開けると、そこは何もない真っ白な空間だった。目の前には双側錐六角柱の形をした小さな石が、虹色に輝きながら空中に浮かんでいた。
「ごきげんよう」
「ごきげんよう?」
「久しぶりじゃな、キース王。いや、それじゃ分からないか──アイリス・グレイ」
「えっと、あなたは──まさか?!」
私は声の主が誰だか思い出し、思ってもみない状況に混乱していた。
目の前にあった石は小さく弾けると、ウサギの姿に変化した。ウサギは浮かびながら私の目の前までやって来ると、腕を組みながらふんぞり返った。
「やっぱり、私の見立ては正しかった。成功じゃ」
「あの、ノーム様ですよね? どうして私は、このような恰好をしているのでしょうか?」
姿形は違うものの、私はウサギがノーム様だということを確信していた。
「それはじゃな……」
「それは?」
ノーム様の喋り方に違和感を感じながらも、私は話の続きを聞いていた。
「話せば長くなる。もともと、そなたは別の異次元世界──ニホンだったか? そこからキース王に転生することが決まっていたのじゃ。それが、そなたが持っていた異能力のせいか、魂移しの際にキース王の身体に適合せずに、更に別の異次元へ飛んで行ってしまってのじゃ。まさか未来へ飛ばされているとは思わなかったから、探すのに苦労したよ」
「魂移し?? 異能力??」
「調べはついている。そなたは、前世で識る力に似た異能力を持っていたじゃろう? その能力のために、転生することが逆に困難になってしまったのじゃ」
「今更なのですが、なぜ私である必要があったのでしょう? アイリス・グレイとして転生してしまった後なら、他に適任の方がいらっしゃったのではないでしょうか?」
「そうではない。召喚するにあたって、他に適合者がいなかったのじゃ。膨大な魔力に、識る力が加わったらどうなると思う?」
「どうなるって──世界最強?」
「そうだ。他国から脅威とみなされ、場合によっては魔力暴走を引き起こす可能性がある。そなたが元いた世界の言葉を使って言うならば、人間兵器か」
「……」
「そなたの元もとの力である識る力は、そのままにして、多すぎる魔力をギリギリまで取り除いておいた。急に少なくなったら、かえって怪しまれるじゃろうからな。それに、強すぎる力は身を滅ぼすとも言われているしの──しかし、これで全ての憂いは無くなったはずじゃ」
「待ってください。やっぱり訳が分かりません。どうして私である必要があったのでしょう? キース王は生きているのですよね?」
「そうじゃ。民を傷つけてしまった事によって自己嫌悪に陥り、精神崩壊してしまったがな」
「?!」
そう言った地の精霊ノームは、ウサギの恰好のまま私の目の前に手のひらを差し出すと、その上に白い渦を出現させた。