表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/89

恋人ではない恋人

 彼は泣き疲れたあと、眠ってしまった。教会の床へ寝かせると、自分の上着を彼の上へ掛けてあげた。


「陛下、それでは陛下が風邪をひいてしまいますよ。こちらを、どうぞ」


「ありがとう、ユリウス」


 ユリウスは自分が着ていた上着を脱ぐと、私の肩に掛けてくれた。夜になると少し冷え込むため、彼の言葉に甘えることにした。


「彼とは親しかったのかしら? 何も覚えてないと、どうする事も出来ないわ。私に記憶が無いことも知らないみたいだし……」


「少し、様子を見ましょう。何かあれば、遠慮なく仰ってください」


(遠慮なくって言ってもねぇ。私とジュールが深い関係だったのか、私に聞かれてもユリウスも困るわよね)


「陛下。陛下とジュールは友達同士みたいな関係でしたよ。ただ、私やジークよりも仲が良かったというだけです。手は握ったことはあったかもしれませんが、それ以上の関係は無かったと思われます。陛下が王族でしたし、お互い慎重だったのでしょう」


 疑問に思っていたことが顔に出ていたのか、ユリウスは戸惑いながらも教えてくれた。けれど、そう言ったユリウスの顔は少し悲しそうだった。


「……」


「たとえ友達同士だったとしても、お互いに好意があるのは、誰もが気がついていたと思います」


「ユリウスは、どうして悲しそうな顔をしているの?」


「え?」


「ジュールの話をする時のユリウスは、すごく悲しそうにみえるわ」


「ジュールと陛下を大切に思っているからですよ。宿屋に戻りましょうか」


 ユリウスはジュールを背中に背負うと、馬車まで運び、ジークと共に宿屋へ戻った。その様子は、いつもと変わらないように思えたのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ