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フラグ回避?

「何だ、王子か。それじゃ、わたしじゃないわね」


「キース様? 何を仰っているんです? 今のご自分の立場をお忘れですか?」


「でも、さっきユリウス様が、私のことを『陛下』と呼んでいたし。もう王子なんかじゃないわよ。って言うか、王女だけど」


「それは、おそらくキース様に王としての自覚を持ってもらうために、ユリウス様がわざとそう呼んでいるのでしょう」


「えっ、でも私は女性だし……」


「その事は、俺含めてユリウス様とジーク様と、ごく親しい側近しか知りません。幸い──と言うべきなのか、キース様は美しすぎて女性か男性か区別がつきませんし、男性と言われても、何ら違和感はありませんよ」


「ええっ?! もしかして、またフラグ回避しなくちゃいけないの? こうしちゃいられないわ。ジェイド、今すぐカルム国を建国しましょう」


「キース様。俺の話、聞いてましたか? カルム国の建国が早まると、俺の結婚も早まっちゃうんです!!」


 ジェイドがそう叫んだ瞬間、部屋のドアがノックされた。


「キース様? 先ほど、すごい音がしましたが大丈夫ですか?」


「ユリウス、平気だ。ドアを閉めた時に、壁に飾られていた作品が額縁ごと落ちてしまってね。ネモフィラ嬢にケガはないから心配いらないよ」


「陛下はご無事ですか?」


「もちろんだ」


「そうですか。旧友との積もる話もおありでしょうが、1階の応接室でお待ちしておりますので、お話が終わりましたら、応接室へお願いします」


「ああ、分かった」


 少しして、ユリウスが階段を降りていく足音が聞こえた。私は知らず知らずの内に止めていた息を吐き出した。


(今の話、聞かれてないわよね)


「今みたいな話し方で、大丈夫なのかしら?」


 ジェイドは口元に手を当てて笑いを堪えているようだった。私に向かって親指を立てると、再び笑いを堪えていた。


「ネモフィラって呼びづらいわね。キースは何て呼んでたの?」


「何でもいいっすよ。アイリス様なら、どんな呼び方でも構いません」


「ええっ、困ったわね。ネモちゃん? ネーちゃん」


「さすがにネーちゃんは、よしてください」


「ジェイドが何でもいいって、言ったんじゃないの」


「キース様は、俺のこと『モネ』って呼んでました」


「モネ……」


「嫌なら、良いっすよ。ネモフィラでも」


「いいえ。私もモネって呼ぶわ。そろそろ戻るわね。長居して、不審に思われても困るから」


「キース様、明日から街の宿屋に泊まるんですよね? 何かあったら──いえ、何もなくても、また遊びに来てください」


「ええ、また来るわ」


「お待ちしておりますわ。キース様」


 私達は顔を見合わせると、思わず笑った。その後、就寝の挨拶をして部屋を出ると、応接室へ向かったのだった。




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