プロローグ
「──いか、陛下!!」
「あれっ?! 私……」
「お目覚めですか? もうすぐ到着しますので、準備をお願い致します」
「夢? でもつ、いさっきまで研究室で実験を……」
「陛下、何を仰っているんですか?」
私は見知らぬ騎士に肩を掴まれ、眠りから起こされていた。ついさっきまで、オーベル様から頼まれた実験の手伝いをしていたはずだ。それがどうして、馬車の中で転寝をしているのか。
私は自分の着ている見慣れない衣服を見て、それから目の前に座っている怪訝な顔をした騎士の顔を見た。
「お疲れでしょうが、もう少しで着きますので」
「着くって、どこへ?」
「新興国──カルム国です」
(やっぱり夢ね)
────ドォォォォォォォォン
「え?」
「この先で何かあったようです。このまま馬車の中でお待ち下さい、キース様」
同じ馬車の中にいた騎士は、私に微笑みかけると森の中へ駆けて行った。それにしてもキースって、どこかで聞いたことがあるような──そこまで考えて、それがカルム国の初代国王の名前だったことを思い出す。
馬車の中から外を見て、ガラス窓にうっすらと映った自分の姿を見て驚いた。
「!!」
そこには男性の格好をした麗人がいた。肩まで伸ばした銀髪に、瞳はアメジストの色をしている。ガラス窓に映った人物は、金書庫にあった初代国王の肖像画にそっくりだった。
「私がキース王? まさかね」
ひとり呟くと、目の前が急に白くなり、辺りがキラキラと光り始めた。気がつくと、私は別の空間へ飛ばされていたのだった。
この作品は「エブリスタ」にて、掲載中です。 小説家になろうの読書様も、最後までお楽しみいただければと思っております。




