表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

疑問

「それって僕は先輩が主人公の小説を書けってことですか?

流石に僕にメリットないですよね?そこまでする必要ってあるんですか?」


今提案されたことについて鵜呑みすることはできない。

僕だってほぼ帰宅部とは言え、帰宅して眠りたいし、宿題とか最低限やらないといけないことだってある。

それなのに、やらなくてもいいことをやるのは嫌だ。


「だよね〜。私もそう思うんだよ。

でもね、これって君にしかお願いできないことだなって直感でそう思った。

多分、君の、あぁ〜、やっぱいいや。なんでもない。

君にメリットはなくても、私はどうしても君にお願いしたい。

君に書いて欲しいの。」


さっきまでまっすぐ僕の目を見て話していた先輩は目を逸らして気まずそうにそう呟いた。


「僕は理由がわからないまま書かなきゃいけないのは嫌です。

今のままだと書く気はさらさらないです。」

断固として僕は書かない姿勢を貫く。


「うん。そうだね。そうなんだよ・・・。」

ゴニョゴニョと先ほどとは打って変わって歯切れが悪くなった。

今先輩がうまく話せないのは、感情の部分なんだろうか。


「先輩の気持ちの問題なら、ちゃんと話してください。

僕はちゃんと納得しないと、どうするか決められません。」


「私はね、自分のことが嫌いで、自分の気持ちを誰かに押し付けたくなくて。

自分の我儘で誰かを困らせたりしたくなくて。

まぁ、実際困らせちゃってるんだけど、今ね。

傷つきたくないの。自分の感情が関わるところで。

自分が自分を肯定しきれないから、誰かに否定されるともう戻って来れなくなる気がする。

だから、あんまりはっきり言いたくない。わかってるんだけど。」


そう言いながら頭を抱えて、しゃがみ込んだ。

それを見ながら、僕は先輩が次に吐き出す言葉を待った。

待ち続けた。

外から運動部の掛け声が聞こえてくる。

それにかき消されそうなくらい小さい声で聞こえた。


「多分ね、君のこと好きなんだよ。」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ