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常識
「ねぇ、貴方の才能で私を殺して欲しいの。」
彼女はまっすぐ僕の目を見て確かにそう言った。
僕は何もない。
僕には何もない。
頭がいいわけでも、運動ができるわけでも、人望があるわけでもない。
容姿は中の下。
スクールカーストでは常に一番下。
何一つ秀でたものはなかった。
学校だって、プライベートだって、何も楽しくない。
早くこんな人生を終えてしまいたい。
死に方だっていっぱい調べた。
誰にも迷惑かけない死に方を知りたかった。
勝手に産み落とされたくせに自分の意思では簡単には死ねない。
飛び込みは損害賠償額がえげつないって話を聞くし、首吊りだって損害賠償が発生する。
樹海に行く?練炭で死ぬ?
僕は一瞬で終えたい。この人生を一瞬で終えたいのに。
そんな僕に、今なんて?
「聞いてる?貴方には才能があるの。私は知ってる。」