表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

桃から生まれてしまった男①

起 期待

承 驚き

転 嫌悪

結 恐怖・悲嘆

ー1  感情:期待ー


 むかしむかし、ある所に、お爺さんとお婆さんが住んでいました。お爺さんは山へ柴刈りに、お婆さんは川へ洗濯に行きました。



「はぁぁ、しんどい。腰も痛いし肩も上がらんわ。下女の1人も居たら楽できるのにねぇ」



 お婆さんは、めっきり悪くなった腰を叩いては、布切れを洗いました。足踏みによる押し洗いなので、腰の負担はマシな方です。



「あぁ冷えるねぇ。夏なら気持ちいい所だけど、この季節じゃあねぇ」



 お婆さんが慣れきったグチこぼすと、川上から何か大きな物が流れてきました。



――ドンブラコ、ドンブラコ。



 ゆっくりと流れてきたのは、大きな大きな桃でした。



「あれまぁ、こりゃたまげたわ。しばらくは食うのに困らないねぇ」



 お婆さんは腰の痛みなどスッカリ忘れて、巨大な桃を抱えて帰りました。


 家で待っていたお爺さんは、あまりの出来事に腰を抜かしてしまいます。



「婆さん! これは何事じゃ!?」


「お爺さん。四の五の言わず食べましょう。当分は桃料理ですからね」


「そうは言うけどよ、村長に相談した方が良くねぇか? 何ぞバケモノでも飛び出したら、一大事だぞ」


「言われてみたら、そうですねぇ。では剥きますよ」



 お婆さんは食欲に敗北を喫しました。お爺さんが止めるのも聞かず、牛刀を振り下ろします。


 するとどうでしょう。桃の中から、それは元気な元気な赤ん坊が飛び出したではありませんか。



「バケモノ!? いや、これは、赤子か?」


「どうしましょう、お爺さん。この桃、可食部位が残ってませんよ」


「婆さん、桃の事は忘れろ。それより、この子をどうしたもんか……」


「育てましょう、私達で」


「正気か? 年寄り2人で子育てなんて、身体がもたねぇぞ」


「私達には子がおりません。丁度良いじゃありませんか。将来は介護要員になってくれますよ」


「うむ。確かに、そのとおりだ。ではワシらで、どうにか育ててみようかね」



 この不思議な赤子を育てるのに、果たして何年かかるだろうか。2人は不安でした。


 しかし、赤子はみるみるうちに幼児となりました。そして、1年と経たぬうちに、たくましい青年へと成長したのです。これで老後は安泰だと、お爺さんもお婆さんも喜びました。


 振り返れば、ここが彼らにとって、幸せの絶頂だったと言えるのです。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ