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美瑠としおり  作者: 氷見
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通りゃんせの謎を解いてみない?

 特に謎なんてなかった

「通りゃんせの謎を解いてみない?」


 今日もマナちゃんは欠席。美瑠クンと喧嘩でもしたのかな?そうだとするとちょっと哀しいけど、きっと仲直りなんて出来るし、喧嘩したと決まったわけでもない。そして今日もやっぱり小学生の女の子がいた。さすがに今回は誘拐したんだろうかなんて失礼な事は思わなかったけど。


「初めまして、美瑠さまの第2彼女の姫子ですわ。以後お見知りおきを」


 まさかの美瑠クンの彼女だった。美瑠クンは実は結構モテるんだろうか。そしてこのしゃべりは素ではなく活動用に作ってるとのこと。活動用って事はマナちゃんと同じくあの正義の味方活動のメンバーって事だ。でもだからってそれ用にキャラを作ろうとか、さすが美瑠クンの彼女になろうなんて子はどこかおかしい。第2彼女って何?と思ったけど、どうやら正妻に対する側室のようなものらしい。じゃあ、第1彼女は誰なんだ、ってなるけど多分みーなちゃんの事なんだろう。ただ、美瑠クンは姫子さんの事はともかくみーなちゃんのことは認めてないと言い張っている。ただ、最低でも姫子ちゃんの事は認めているというのは衝撃的ではあった。だって小学生だよ?確かにロリコンだとは言ってたけど…。


「あなたが、相原しおりさんですね?なるほど、マナさんと違いライバルにはなりそうになさそうで安心いたしました」

 ライバルとは恋のライバルの事らしい。第1彼女は認めても第3以降は認めたくないみたい。ただ何をもってライバルになる、ならないを判断しているのかはわかんない。確かに私は大海クン一筋だからライバルになるわけがない。でも、マナちゃんはライバルになるんだろうか?

「豊島マナさんはライバルになるんだろうか?と思いましたね?えぇ、なるのです。残念ながらこの周回での美瑠さまは私に出会う前にマナさんと出会ってしまい、心の大部分を先に取られてしまいました。ああ、ライバルにならないに越した事はないので余計なことは言わないで下さいね?気づかないなら気づかないで結構ですので」

 そうなんだ?うん?

「それって美瑠クンの本命はマナちゃんてこと?」

「えぇ、美瑠様はお認めになりませんが、一目瞭然ですわ」

 そ、そうかな?うーん、見た感じホントに別に美瑠クンってマナちゃんに特別そういう感情抱いてるようには感じはないんだけど、別にこの子がどう勘違いしていようと私には関係ない。ただ…

「そのしゃべり疲れない?キャラ作ってるって言ってたけど」

「ご心配なく。完全に作りこんでるわけではなくテキトーですので、全く疲れません。最初は高笑いするキャラにでもしようかと思ったのですが、やめて正解でしたわ、おーほほほほほとか絶対疲れますから」

 よくわかんないこだわりがあるけど、まあとにかくよし、面白ければ何でもいい。どこで見つけてきたんだろう、こんな逸材。マナちゃんは…苦手そうだな、こういう子は。

 っと、そうじゃないそうじゃない、今日はアレだ、通りゃんせの謎をとけ。


「通りゃんせはもう散々色々やりつくされてません?」姫子ちゃんの言う事はもっともではある。多分ネットに色んな説はあると思う、調べてはいないけど。でも、だからこそ自分たちで再検証してみたい。というより美瑠クンがどんな答え出してくれるかが楽しみ。

「でも自分たちで改めてやってみるのも面白くないかな?まずは『通りゃんせ』って言葉の意味から」

「通ればよかろうぐらいの意味合いではないだろうか?」

「一般的にはそうだね。でも、その後に、通してくだしゃんせってあるでしょ。あれはどう思う?」

「通して下さいませ、かな?」ん?姫子ちゃんはそれでいいのかな?解釈の話じゃない。「かな?」でいいの?「で、ございませんこと?」ぐらいじゃないとキャラ作りになってなくない?いいのかなー?まあいっか。

「だと思ってる。りゃんせとしゃんせ、基本的には同じでしょ。通りゃんせは、通してくだしゃんせの略なんじゃない?タイトルみたいな」

「ふむ、超ベリーバッドをちょべりばと略すみたいなものか」全然違うし、ちょべりばって…知ってはいるけど、いつの言葉だ。

「略すなら、通しゃんせにならないかな?」だーかーらー、姫子ちゃんはそのしゃべりでいいの?ダメだ、姫子ちゃんに気をとられて議題が頭に入ってこない。

「そうだけど…やんせで検索してみて。して下さいませって意味って出てるでしょ。だから、『通らせてくださいませ』が正しいんじゃないかなって思うんだけど」

「ふむ、まあその解釈の方が意味は確かに通じるが」

「後はこの歌詞は誰かと誰かが会話してるって普通に解釈するとして、細道塞いでるらしき人をA、親らしき人をBとして、どう分ける?」

「なるほど、まずは普通に解釈してみよう、最初の通りゃんせはセリフというより物語冒頭のタイトル的な意味合いでAでもBでもない、後はそうだな。


B:ここはどこの細道じゃ

A:天神さまの細道じゃ

B:ちょっと通してくだしゃんせ

A:御用のないもの通しゃせぬ

B:この子の七つのお祝いに御札を収めに参ります


「と、こんなものではないだろうか?」美瑠クンがミニノートに書きながら示してくれる。それを姫子ちゃんが覗き込んでいる。みーなちゃんもそうだったけど、やっぱり何か可愛いよね、美瑠クンにじゃれてる女の子。

「行きはよいよい以降はセリフじゃないって解釈?」

「ここまでのセリフも無理はあるとは思うのだが、そこ以降はもっと無理があるからな」

「うん、まあ一般的にはこんな感じだろうね。でも、私はそうじゃないと思ってる。有り得るパターンは2つ。まず1つはこれは自分でもよくわかんないんだけどさ」


B:ここはどこの細道じゃ

A:天神さまの細道じゃ

B:ちょっと通してくだしゃんせ

A:御用のないもの通しゃせぬ

B:この子の七つのお祝いに

A:御札を収めに参ります

B:行きはよいよい帰りはこわい


「は?ですの?」ですのきたー。こんにちはーなりーみたいな無理矢理なですの可愛い。

「うん、自分でも意味わかんないと思ってる。ただ、テンポの問題かな。2小節ごとにセリフ主が変わるならこうだよねって」

「こうだよねと言われても、道を塞いでる側が、御札を収めに参ると言っているのか?解釈次第ではあるとは思うが」

「もう1つの解釈はこれ」


B:通りゃんせ通りゃんせ

A:ここはどこの細道じゃ

B:天神さまの細道じゃ ちょっと通して下しゃんせ

A:御用のないもの通しゃせぬ

B:この子の七つのお祝いに御札を収めに参ります

A:行きはよいよい帰りはこわい

B:こわいながらも通りゃんせ通りゃんせ


「なるほど、なるほど、道を塞いでる側が、この道は何だと尋ねているのか」

「そう。正しく答えられるかどうか試してる感じ。これなら一通り意味は通るし、道塞いでる人は2小節、親が4小節ってリズムになる」

「それでこの解釈だとどうなりますの?」

「それをこれから少しづつやっていこうって。まず、親の発言だとすると『どこの細道』って発言はおかしいよね。迷子?」

「あぁ、言われてみればその先に行きたいはずなのに、ここはどこ?って聞いてる事になるんだ」

「だから、相原さんはこの発言主は細道を塞いでる側の発言だと?」

「そこなんだよね。その後の答えがおかしいんだよ、もう。『天神さまの細道』って、どこの細道っていうか誰の細道じゃない、それじゃ?」

「それは違うのだ。天神さまとは天神さま本人を指しているのではなく、天満宮のことを指しているのだ。稲荷神社をお稲荷様と呼ぶのと同じようなものなのだ、擬人化した呼び方なのだ。つまりそれは神社へ続く細道という意味なのだ」え?そーなの?いや、自信満々に『誰の細道じゃない?』って言っちゃったけど、どうすればいいんだろう?

「…そ、そういう解釈もあるかな。でも、「てんじんやま」か「てんじんさん」の聞き間違えとかって可能性はないかな?」

「お見苦しいですわ、もう天満宮への道でそこはよろしいのではなくて?」ヘンなしゃべりで正論言われるとへこむんだけど。

「じゃ、じゃあそこはそれでいいか。次に疑問なのは御用のないもの通しゃせぬ。何で?」

「さあ?」

「そりゃ、さあ?だろうけど、それを考えるんだってば。ただ、『御用』ってのが結構不思議だと思わない?御用って高い位…公的なのとか、そうでなくても相手の方が身分が上の場合に使う言葉だよね?「用が無いなら帰れ」ってのを「御用が無いなら」とか言わないからさ」

「つまり、時代はわかんないけど朝廷とか幕府とか政府とかそういうとこの命令じゃないなら通さないって事?それなら理由があって閉じてる意味はわかんなくもないか」

「ふむ。それであれば、厳戒態勢で警護をしているところに不審人物が近づいてきたので、「ここがどこかわかっているのか?」「えぇ、天満宮へと続く道ですよね、通してくれませんか?」「いや政府の命を受けている者でないなら通せない」とこんなやりとりをしたという事になるのか」そう、その通り。

「意味は通るんですが、だから何だって話ですわ」

「それでもめげずに、この子の七つのお祝いに、なんだけど、これもちょっと意味不明なんだよね、わかる?」

「わからないのだ」早いよ、少しは考えてよ。

「わかりません」早いって。

「御札を収めに参ります。それって天満宮でお札をもらってお礼参りに来たって事だよね?七つのお祝いに、じゃなくて七つのお祝いの、じゃない?」

「あぁ、『の』ではなく『に』なら、お札をもらいにきたじゃないとおかしいって事か」

「が、返しにきたと言っているのか。…それが、かえりはこわいのかえりなのか?」おぉぉぉ、さすが美瑠クン、そこに気づいてくれたか。

「よいよいとこわいの意味がわかんないからどうしてもここで止まっちゃう」

「AIに聞いてみたのだ。『ようやっと』『やっとの思いで』とかそういう意味があるらしいのだ」

「いきはブレスかな?」

「意味わかんないんだけど、それじゃ」

「やっとの思いで手に入れたお札を返しにきたんだろうけど今は厳戒態勢で無理だ?って事かな?」

「無理を承知でお願いします?」

「…やっぱりだから何だって話ですわ」

「うーん確かに何か微妙だなぁ。これ以上話広がる気もしないし。うーん、次はもっと面白い題材用意するから期待してて」


 うん、通りゃんせは大失敗だった。姫子ちゃんの言う通り、今更特に解く謎なんて無かったんだ、きっと。

 ただ、作中で書いた通り

「ここはどこの細道じゃ?」と親が聞くのはおかしい。

「御用」という単語は一般人相手に使うものではない。

「お札をもらいにではなく返しに」なのに「お祝いに」なのはおかしい、とやっぱり色々とおかしい歌詞なのは確か。こういうったあまりにも当たり前な文法的なとこに触れてる人が全然いないよなぁと思って今回のは書いた。

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