メリーさんじゃなくてリカちゃんなのだ
ちなみに「メリーさんの羊」から羊連呼は決して覚え間違いだの歌詞間違いだのではない事に注意だ。ネット検索すると子供の頃に歌詞を間違って覚えてた説多いんだけど、ホントにそう歌っていた人がいて、それが有名だからこそそれで覚えてる人が多い。聞き間違えて歌詞を間違えていたとかそういう話ではないのだ。
「当然メリーさんは知ってるよね?」
ウサギとカメの話からひらめいたことがある。ずっとこの話をしたくてしたくて今日という日を待ちわびていた。けど大海クンもマナちゃんも何か忙しいから無理だって。美瑠クンの家に入りびたってる私がまるで暇人みたいだけど、私だって暇を持て余しているわけじゃない。時間なんて作るものだって誰かが言ってた。そういう事であって私が暇なわけじゃないはず。ただ、今日は先にお客さんがいた。美瑠クンが誘拐でもしてきたのかとびっくりしたけど違うらしい。
「妹のみーななのだ。引っ越し先は秘密にしてたのに何故かバレてしまったのだ」
外見の話は失礼ではあると思うけど私の内心の話だ、勘弁して欲しい。誰もが認める美少女とは言えないけど可愛らしいという表現は間違いなく似合う小学生の女の子、どうやらホントに美瑠クンの実の妹らしい。
微妙に敵意を感じるのは多分この子は…ブラコンだ。兄離れが出来てない。引っ越し先を秘密にしたっていうのは多分美瑠クンもそれを思っての事だと思う、なのに押しかけてくるとか、大した行動力だと思う。でも、マナちゃんはわからないけど、私は美瑠クンを取る気は無いからそんな目で見ないで欲しい。
「先に言っておくけどお兄ちゃんとボクは両想いだから」
そうなんだ。それは…それはよくない。でもよその家庭の事だし多分両想いじゃないし。美瑠クンに逃げられた事をどう思っているんだろう?どう解釈して両想いだという設定をつなぎとめているんだろうか?そこは少し気になってしまう。
「みーなの言う事はあまり気にしなくていいのだ」
美瑠クンは美瑠クンで結構冷たいけど、突き放すぐらいじゃないと兄離れ出来ないかもしれないし、しょうがないのかな?
「うん、ちなみに私は小学生の頃からつきあってる彼氏さんがいるから」
「小学生の頃から!?」食いついてきた、でも恋愛相談とかされてもそれは困る。大海クンの事しか私は知らないから。
「正確に言うと小学校卒業直後から中学校入学辺りからかな」
「おぉぉぉ、やっぱり小学生だって恋愛オッケーだよね。それでつまり、だからお兄ちゃんには興味無いって事でいい?」
面倒くさそうな質問がきた。これで笑顔で「そうだよ」と答えると「お兄ちゃんのどこが悪いの!」とかキレるパターンじゃない、これ、もしかして?何かそういう面倒くさそうな空気漂ってるし、この子。
「うん、異性としてはそうだね。人としては話してて面白いからこうやって時々来て雑談相手になってもらってはいるけど。前回は大海クン…えっと、そのずっと付き合ってる彼氏さんも連れてきてるし」
「なるほど。そういう事なら大丈夫か」
マナちゃんは敵視されるだろうなぁ、まあ私には関係ないからいいかな。そんな頻繁には来れないだろうし、そもそも。後はこの子がどんな面白キャラなのか、かな。美瑠クンの妹なんだから期待しないわけにはいかない。今のとこブラコンっぷりが危ないのと美瑠クンの一人称が私なのに、妹の方はボクで別に性別で一人称決めつける気もないけど、一般的な印象とは逆じゃないかな?ってとこぐらいか。
…もしかしてマナちゃん今日この子がいるって知ってたな。それで逃げたか。それで正解かもしれないけど、せっかくメリーさんの謎をとける日だっていうのに勿体ない。
「メリーさんは多分羊飼いなのだ」そう来たかー。なるほどなるほど。
「お兄ちゃんはだからダメなんだよ、話拡げるためにここはメリーさんは羊なのだって言わなきゃ」なるほどなるほど、妹さんはこう来るのか。
「そうだね、羊飼いなのだーとか言われても、羊飼いでもないしさ」
「世界中探せば羊飼いのメリーさんはいるかもしれないのだ」
「うん、小学生みたいな屁理屈はやめようか」それを言い出したらどんなメリーさんだって有り得ちゃうから。
「メリーさんは羊なのだとか答えても通っちゃうよ?、その理屈だと」ブラコン確定なのに結構お兄ちゃんにもガンガンツッコミ入れていくスタイルなのか。
「うん、世界中のどこかにメリーって羊がいてもおかしくはないね、確かに。だからそういう世界中探せばは無し」
「結局、メリーさんは何者なのだ?羊飼いでもないのに羊飼ってるとか」
「昔金魚飼ってたけど、ウチの家族は別に金魚飼いじゃないよね?」特別面白キャラってわけじゃないけど、美瑠クンにだけガンガンツッコミ入れていくスタイル悪くない。これはアピールしてるのかな?私は…いや、ボクだっけ?ボクはお兄ちゃんにツッコミ入れられるぐらい優秀で、お兄ちゃんはボクがいないと全然ダメなんだからみたいな。…すごい可愛いな、そう思うと。健気な努力っていうか。応援しちゃいけないんだけど応援したくなってくる。
「そう、メリーさんは羊は飼ってるけど羊飼いじゃなくてただの羊を飼ってる家の女の子だよ」確かそうだったと思う。
「普通、羊はペットとして飼わないのだ」
「それはどこの普通?お兄ちゃんの中では普通でも羊を飼うのが普通だって国とか人もいるかもしんないよ?」ダメだ、面白い。美瑠クンが何か言う度にツッコミが入る。しかも即入るから結構面白い。ユニーク…オリジナリティのあるツッコミではないけどその速さは重要だ。どんなに面白いツッコミでも、1秒2秒と間が空いてしまったら多分残念な事にしかならないから。
「普通か異常かはわかんないしペットだったのかどうかもわかんないけど、羊飼いじゃないのは確かだよ」
「そうなのか、ただあの歌は一体何なのだ?何のオチも無いというかただメリーさんの羊が可愛いとか言ってるだけなのだ」
「今更なんだけどさ、美瑠クンは年齢誤魔化してないかな?何か昭和感あるよね。多分羊連呼バージョンでしょ、それ」歌詞が違うとかネットに結構書かれてるやつ。…しまった妹さんより先にツッコミ入れちゃった。ついつい言っちゃったなぁ。
「羊連呼じゃないバージョンがあるんだ?」妹さん、みーなさんもそういうって事は両親経由って事かな?
「よくわからないのだ。ただそれより「デモッソの都市」とかいうなら、完全にあれはメーリさんなのだ。歌詞にメリーさんって出てきて違和感しかないのだ。誰もメリーさんとは歌ってないのだ」
「それだと歌いにくいからじゃないかな?」
「でも言いたいことはわかるなー。歌詞と音階があってない的なのとかさ。赤とんぼなんてあか↑とんぼだし」
「そういうイントネーションの地方もあるんじゃないかな?西とか」妹さんからツッコミ頂きました。これは私にもなじんでくれたって事でいいのかな?でも、その意見には賛同しがたい。
「西でも赤とんぼはあかとんぼだと思うけどなぁ」
「西を舐めちゃいけない」一体、みーなちゃんは西の何を知っているのか。
「確かに結構イントネーション驚くのだ。で、メーリさんの何の話なのだ?」
「メーリさんじゃないから、それが通るならロンドン橋なんてローンド橋になっちゃうし」
「その2つ何か似てるよね、メーリさんとローンド橋もそうだけど、何か連呼するとことか」
「リズムが同じなのだ。だから歌詞を入れ替えても違和感なく歌えるってパターンなのだ」ああ、よくある、そういうのは。
「メーリさんがふぉーりんだうんふぉーりんだうん、めーりさんがフォーリンダウンまーいふぇいあれいでぃ」みーなちゃんが可愛い。英語バージョンも知ってるんだぞアピールかな、今度は?
「ロンドン橋のアレはロンドン橋自体じゃなくてロンドン橋からメーリさんが落ちる歌だったのかなのだ」だったのかなのだ。
「うん全然違うね。ロンドン橋自体が落ちちゃった歌だから」
「じゃあ、マイフェアレディって何なのだ?」
「私の公正な淑女?」みーなちゃんが可愛い。
「いや、そういう事を聞いているのではないのだ。日本語訳ではなく、というか日本語訳だと、可愛い私の天使さん…幼女最高なのだーぐらいの意味あいなのだ」
「幼女?」
「橋にハァハァする変態が歌った歌という事なのだ?」変態兄妹の暴走が止まりません。
「ろーんどばしひつじひつじろーんどばしひつじ…ロンドン橋に引っ張られちゃうな、結構」そうかな?
「ろーんどばしりっとーらーりっとーらー」
「いやそれはおとなげないのだ」歌ってる途中に遮られました。ただ挑戦してみただけだったのに。でも何してたんだっけ?
「…ロンドン橋とかどうでもよくてさ、メーリさんじゃないメリーさん知らないかな、有名な」
「ブラッディメアリーさん」
「それ、さんつけないし、英語圏ならともかく日本じゃメリーとマリーとメアリーは別だし」
「横浜メリーさん」
「誰それ?わかってるよね、絶対わざと避けてるよね、2人で?もしもし私メリーさん」
「あまりにも行動が面白くてネットでおもちゃにされてるメリーさんだね」おもちゃにされてる…うんまぁ、いちいちこまめに連絡する面白い怪異ではあるけど。
「アレはメリーさんではないのだ、リカちゃんなのだ」リカちゃん?
「タカラの?」いや、タカラのリカちゃんはさすがに関係…なくないのかな、そういえばあれも人形か。
「そうなのだ。リカちゃん電話があって初めて成り立った都市伝説なのだ。名前変えてしまったら成り立たないのだ」何かいきなり新説出てきた。
「リカちゃん電話って何?」
「リカちゃんが自分の事をしゃべってくれるのだ。今もあるのだ、確か」ホントだ、調べてみたらホントに、もしもし私リカちゃんから始まる怪談結構ネットにある。でも、こっちが先とは限らないしなぁ。でもつまりは新説でも何でもないのか。
「リカちゃん電話はリカちゃんの録音テープか何かを聞く内容なのだ。なのにそのリカちゃんから逆に電話がかかってくるというところに意味がある都市伝説だったのだ。誰だよ、メリーさんって」…最後の口調ちょっとおかしくなかったかな?
「ちなみに声はハイジだったのだ。雲が私を待ってるとか思い違いしてる頭おかしい方の」アルプスの子だよね、そうじゃない方のハイジって誰か知らないけど。というかハイジなんていっぱいいそうだけど。
「リカちゃんの都市伝説は私の両親が小学生の時に既にあったらしいのだ。かなり古いのだ……昭和50年代にはもう成立していたのだ。メリーさんとかトイレの花子さんより新顔なのだ。ちなみにトイレの花子さんも原型はともかくアレも実のとこ全然歴史ないのだ」美瑠クンは怪談とか都市伝説マニアか何かなんだろうか。
「花子さんは結構古いんじゃなかったっけ?」
「だから原型はともかくと言ったのだ。今の花子さん、特にあの姿は本当にちびまる子ちゃんの後なのだ。昔の小学生というオーダーで多分イラストレーターが参考にしたんじゃないかと思うのだ。今となっては調べようがないとはいえ…あー、私なら調べられるのか?」何で?あの服装を最初に描いた人と知り合いとか?あの服装で最初に描かれた最初を調べるのさえ難しいと思うんだけど。
「ネットで調べた限りだと、最初と思われるものはカラーリングも違っていてあそこまでちびまる子ではなかったのだ。多分、敢えてカラーリングとか変えたと思うのだ……盗作だから。それを後の人がこんなカラーリングとデザイン無いわ、とやっぱりちびまる子ちゃんを参考に変えたんじゃないかと思うのだ」
「…まあいうのは自由って事で、今回は花子さんじゃなくてメーリさんだから」
「メーリさんではないのだ」
「なるほどなるほど、ただ人形の名前が何だろうとどうでもいいんだ。メリーさんでもメーリさんでもリカちゃんでも。問題は何であんな頻繁に電話かけてくるのかだよね」
「マメな性格なのだ」
「嫌がらせじゃない?でも昭和50年代に携帯電話ってあったんだ?」
「ショルダーホンっていうのがあるんじゃなかったっけ?」何か昭和の映像とかで見た覚えがある。ギャグみたいな大きい携帯電話。
「ショルダーホンが昭和60年代なのだ。電話も無いのに電話をかけてくるのが怖いのだ、リカちゃんは」
「リカちゃん型携帯電話をリカちゃん電話とかって名前で販売したら何か売れそうだよね」
「そんなホラーなアイテムいらないのだ」
「勝手にそういう都市伝説と結びつけるからホラーになるだけで、それ無ければただの電話出来る人形だよ?」
「外で見たらお人形さんに話しかけてるヤバイヤツなのだ」
「リカちゃん型携帯電話が実際に発売されればそれが当たり前になるから」
「本当にヤバイ奴と見分けがつかなくなるのだ」それは少し困る。けど、人形に話しかけてる人なんて見た事ないからセーフ。区別つかなくなる事はないはずだ。
「見た事あるの、お兄ちゃんは?その人形に話しかけてる人って」私と同じ事を思ったみたいでみーなちゃんも久しぶりにお兄ちゃんにツッコミを入れてる。可愛い。
「あるのだ。なかなかにやばいのだ。誰もいないのにぶつぶつ言ってる人なら割とどこにでもいるからほとんどの日本人は耐性出来てると思うのだ。でも、人形という話し相手が存在してしまうとかなりやばくなるのだ。正直怖かったのだ」誰もいないのにぶつぶつ言ってる人は確かに見た事はある、あるけど割とどこにでもいるってレベルなのかな?でも、それを耐性出来ててどうとも思わないレベルの美瑠クンでも恐怖覚えるのか、人形に話しかける人。
「ごめん、リカちゃん電話は無しって事で。誰でも思いつきそうなのに商品化してないって事はそういう怖いとかそういう辺りもあるんだろうし。それでメーリさんなんだけど電話の間隔と移動スピードがあってないぐらい速いのが割とお約束なんだけどどう思う?」
「いやだからメーリさんではないと思うのだ。移動スピードは多分実際瞬間移動ぐらい余裕で出来るのにわざとちまちま少しづつ近づいてきていると思うのだ」
「だったら移動スピードも合わせた方がよくないかな?その方が多分怖いから」
「ここで大事なのはね、移動しているメーリさんを見たって人がいないって事なんだよね。じゃあどういう事なのか。とりあえず実演してみるね」
「ミステリの自意識過剰というか謎解きを犯人に見せつけたくてしょうがない探偵さん?」なんだと、せっかく実演してあげようっていうのに、生意気なお子様め。いいじゃないか、社会の厳しさと大人の怖さを教えてあげよう。
「うん、じゃあこれからみーなちゃんをゴミ捨て場に捨ててくるから、美瑠クンは電話待ってて」
「別にゴミ捨て場じゃなくてもよくない?」なんだと、捨てるって言われた事は気にしないのか。美瑠クンの妹やっぱりどうかしてる。
「は?え、ホントに?いや、人間捨てちゃダメなのだ。それは犯罪なのだ。みーなも平然としてちゃダメなのだ」
「いやホントに捨てはしないから」
呆気にとられてる美瑠くんを残してみーなちゃんを連れて外にいったん出て、みーなちゃんに何をしてほしいのか詳しく説明をしてみた。ブラコンのこの子が協力してくれるかどうかが問題だったけど、楽しそうな表情を見せてくれた。後はこの最初の一手、ここが肝心だ。「準備出来たよ」何喰わぬ顔で玄関に戻った。
「相田さんは一体何をしているのだ?みーなホントに捨ててしまったのだ?」ホントには捨てないって言ったんだけど聞いてなかったんだろうか。「だからホントには捨ててないから」美瑠クンの向きを無理矢理変えて部屋まで押していく。「少し待ってれば電話かかってくるから」。
言ってるそばからもう電話だ。はやいはやいよ、みーなちゃん。
「もしもし美瑠なのだ、みーなは何をしているのだ、一体?」
「もしもし私みーなちゃん、今ゴミ捨て場にいるの」
「みーなの一人称はボクなのだ、それと電話かけてきた側がもしもしと名乗るのはおかしいのだ…誰なのだ?って、切りやがったのだ」
5秒後また電話がかかってきた。
「はやっ」
「もしもし私みーなちゃん、今あなたの家の前にいるの」
「途中飛ばしすぎなのだ…みーなは私の事をお兄ちゃんと呼ぶのだ。玄関開ければいいのか?」美瑠クンは律儀に玄関を開けにいく。開けても当然そこにみーなちゃんがいるわけはないのだけど。また電話がかかってきた。
「もしもし、後ろ振り向けばいいのか?」
「もしもし私みーなちゃん、今あなたの後ろにいるの」みーなちゃんがそーっと歩きながら美瑠クンの背後に近づいていく。
「うぉっ…」おぉぉぉ、美瑠クンがホントに驚いてる。何か貴重だ。
「一体何が……まさか、死神、いや天使が力貸してるのか?」天使?何?中2病ってやつなのかな?
「お兄ちゃん…そういうのは14歳で卒業しようよ?相田さんと一緒に帰ってきて、相田さんがお兄ちゃんの向きを変えた隙に見えないとこまで移動してこそこそ電話かけてただけだから」そういう事だ。場所の報告には意味がない。同じ場所からかけ続けて「〇〇にいるの」と言ってるだけ。
「そういうことでした。わざわざ位置を相手に伝える事でリアルタイムに今移動してると思わせて、実はもう家の中にいる」
「じゃあ、最初から家の中にいるといえばいいのだ、その時点でもう十分怖いのだ。捨てたはずの人形が家の中にいるとか」それもそうだ。でも、近づいてくる恐怖は大事。
「最初から家の中にいないにしても位置を誤認させる意図はあると思うんだ。少しづつ近づいてくるから、先にそこに人を配置したりとか対処しようとしても実際にはそのルートにメリーさんいないから対処できない。メリーさんは一方的に居場所伝えるだけで会話出来ないんでしょ?もうそれが証拠だって。今何が見えてる?とか聞かれると困るんだよ、リアルタイムにその場にいないから。だから居場所伝えるとすぐ切っちゃう」
「……これは使える…か?人数動員すれば。実は今、ちょっとした知り合いの小学生がタチの悪い先生に仕返しをしようとしているのだが、その仕返しというのもどうにもタチが悪い代物でもう少し軽いものに出来ないかと豊島さんと相談していたんだが、これは使える気がする。先生に幽霊からの電話という形で少しづつ近づいていくように演出する。その場のリアルタイムの写真も送りつければよりそれらしくなる。もちろん、写真は人数を動員してその場に事前に配置しておく。写真はすぐに送ってもらう。それか共有みたいな機能もあるのか?私はその辺り詳しくないのでわからないのだがまあ普通に送ってもらえばいいだろう。後はその写真を幽霊役の電話から送ればいい。最初は先生も相手にしないだろう。けれど、幽霊ではないにしても誰かが少しづつ近づいてくるのは間違いない。それは多分怖いはずだ。何のイタズラだと思うかもしれないが、先生も自分が児童たちによく思われてない事ぐらいはわかっているはずだ。仕返しとして何をされるのだろうと不安になるだろう。何かの手段で誰が近づいてくるのかとリアルタイム情報を知ろうとしても、その近づいてくるルートにそれらしい人影はない。もちろん、写真撮影用のスタッフはそこにはいるのだが、それを怪しいと思う事はないだろう。誰かが写真を撮りながら近づいてきているのは確かなのにその姿はない。それでもイタズラだと思うだろうが、もしかしたらホントに幽霊の仕業なのかと思うかもしれない」
「最終的にはどうするのかな、それ?」
「最後は別に何もしなくていいと思うのだ。お約束通りに今あなたの後ろにいるので終わって、実際に後ろにいなくても別にもうそこまで十分に恐怖すれば」
「家から逃げたらどうする?」
「それはもちろん追跡するのだ、しつこく」
「しつこく」なかなかタチの悪いイタズラだ。
「面白そうだけど、その知り合いの小学生って女の子?」みーなちゃんは性別を気にしてるようだけど、男の子なら安心ってわけじゃないと思うんだ。同性愛っていうのもありえる。
「男子2人と女子1人の3人グループなのだ」普通に男子なのだって言っておけばいいのに、美瑠クンは無駄に正直だ。
「男2:女1って漫画とかでもありがちだよね。1人どうしても余っちゃうのに、そんなの」
「南ちゃんと上杉兄弟…ヤンとラップとジェシカ…他にも次々と確かに出てくるのだ。そのグループももしかしたら圭司クンが余っちゃうかもしれないのだ」圭司クンとか何か個人情報出てきたんだけど、いいのかな名前?その名前だけじゃ誰かはわかんないけど。
「つまり、もう残り2人は付き合ってはいないけどそれに近い関係てことか。ならよし」
わかりやすい子だなぁ、ただ、でもこれはみーなちゃんには悪いけど彼女にしちゃいけないタイプとか分類されるタイプだ。異常に嫉妬深い。本当に両想いで男性の方はホントにその人にだけ愛情を注いでも浮気を疑うタイプだよね。小学生のウチに治ればいいんだけど。
ただ、私はみーなちゃんのタイプ分類をしてる場合じゃない。マナちゃんと小学生の仕返しの手伝い?仕事仲間って…一体どんな仕事してるとそんな事になるんだろう?
「もしその作戦やるっていうなら手伝ってもいいかな?」
「それは私が決めていいものかどうか。豊島さんと決めてもらえれば」
決定権はマナちゃんにある?それともマナちゃんの知り合いだから?
「先に言っておくとみーなはダメなのだ」
「それはしょうがないか」
「…結局、美瑠クンとマナちゃんて何やってるのか聞いていい?仕事仲間だって言ってたけど。みーなちゃんも多分気になってるだろうし」
「豊島さんが隠したいなら私が話していいのかわからないのだが、そうだな、正義の味方的な活動をしている。…いや、そういう目で見ないで欲しいのだが。いや、だから中2病とかではないのだ」
「学校行きながら?」
「基本的に活動は休日のみなのだ」正義の味方的な活動か。……何で私の周りそんな珍しい人が複数いるんだろう。マナちゃんもかー。
「前に来た大海クンもさ、実は自称正義の味方なんだよね、最近は言わなくなったけど」
「知ってるのだ。正義の味方として12歳の相原さんを助けたのだ」子供の頃の大海クンを知ってたかと思えばやっぱりマナちゃんか。一体どこまで話したんだか。
「お母さんも何か昔正義のヒーローやってたらしいから血なのかな?」正義の味方って実はいっぱいいるんだろうか。でも、マナちゃんはらしいっていえばらしいかな。そっか、最近生き生きとしてるのって美瑠クンがどうとかよりその活動が楽しいって事か。うーん、ならやっぱり一緒にやりたいとこだな、大海クンも巻き込んで。
「母が正義のヒーローだとか初耳なのだ」
「何か活動内容とかは言えないって言ってたし、ボクもどこで何がきっかけでそれ聞いたのか覚えてないから、基本的には秘密なんだろうね。正義のヒーローだし」正義のヒーローは正義のヒーローである事を知られてはならない!マナちゃんも多分そんなノリなんだろうな。
「あ、あぁぁぁぁぁ、美瑠クンがマナちゃんを助けたってその活動だったって事?」そういう事か。だとすると正義の味方ごっこ的なノリじゃなくて今回の小学生の仕返しのお手伝いっていう方がむしろ珍しい活動ってことか。
「そういう事なのだ。それで人手が欲しかったので豊島さんをスカウトしたという事なのだ」
「え、人助けしたの?」みーなちゃんは知らないわけか。
「普通にニュースになるような連続殺人犯から私の親友を助けてくれたのが美瑠クン、みーなちゃんのお兄さんだよ」
「…普通に格好いい。ちょっとお兄ちゃんのイメージと違うけど」
ちょっと普通と違う子だから、こんなのボクの知ってるお兄ちゃんじゃない!ってなるか、さすがお兄ちゃんってなるのか、どっちだろう?
「ちなみに今回の活動は先生を護るための正義の活動でもあるのだ。子供たちの仕返しがあまりにも過激なのでそれをやめさせるという。正直に言えばその先生がどうなろうと個人的にはどうでもいいのだが」
メリーさんの話をしたら結構面白い情報までついてきた。美瑠クンとマナちゃんの活動内容は興味深い。でも、美瑠クンとはこれからも基本的には雑談をする関係でいたいなと思う。でも、そっかー、年下の男の子がピンチを助けてくれる…私と同じなのか、しかもその男の子が正義の味方ってところまで。
ちなみに私は勇気のうたの「もう最後かと」を「毛細ゴーカート」だと思っていた。意味はわからないが。「もう最後かと」とはとてもじゃないけど聞こえない。あれは絶対「毛細ゴーカート」だと断言する。