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美瑠としおり  作者: 氷見
2/8

赤鼻のトナカイはラノベ

 ルドルフはサンタに認められるとかではなく、自力で自分の素晴らしさを伝えなくてはいけない。

「美瑠クンはルドルフってどう思うかな?」


 ちょっとイヤそうなマナちゃんを連れ出して美瑠クンの家に向かった。家にいる事は確認済。マナちゃんのイヤそうな態度なんて嘘だってわかってる。だって絶対マナちゃん…美瑠クンの事好きだから。だからこれはマナちゃんを美瑠クンに逢わせるための口実。決して私が面白くてやってるわけじゃない。


「ドイツ人ではないだろうか?」今日は「なのだ」じゃないのかな?

「ドイツ人っぽいけどドイツ人とは限らないよね?」

「ふむ、ドイツ系かもしれないし、そうでないかもしれない。もしくは人の名前ですらないかもしれないという事か」さすが美瑠クンは話が早い。でも、この程度は美瑠クンじゃなくてもわかる事だ。

「そうだね。もしかしたら、ルで切れるル・ドルフみたいな宇宙人かもしれない」だからどうだってわけでもないけど、ルドルフと聞いてルドルフとしか考えないような人ではダメだと思う。マナちゃんも大海クンも何度説明してもこれを理解してくれない。

「ル・カインという宇宙人なら知っている。グラドスとう星の人間なのだ」でた、なのだ。っていうか古いアニメなのによく知ってるなぁ。

「それ結構古いアニメだよね?若い子が知っててお姉さん嬉しいよ、うん」

「美瑠クンと6歳しか差無いし、私は知らないんだけどそのル・カインとかいうの」そんな…ウソだ、マナちゃんが知らないなんて。

「そんなんで10年以上も私の親友してきたんだ?」

「そーだね、自分でもびっくりだ。親友がこんなキャラだったとか今まで知らなかったし。で?ルカインじゃなくてルドルフだよね、話?」そーだ、ルカインなんてどうでもいい、さすがマナちゃん。

「さすが親友。素晴らしい洞察力だよ。そう、ルドルフ」

「銀河帝国の皇帝なのだ」

「何、スターウォーズ?悪いけどそれも知らない」…マナちゃん、キミにはホントがっかりだよ。じゃあ何なら知ってるんだ。スターウォーズの話なんてそもそもしてないけど。

「マナちゃんはさ、何なら知ってる?」

「色々知ってるけど?これでも豊島さんと話すのは面白いとか結構言われるし」

「スターウォーズも知らないのに?」

「スターウォーズの話で盛り上がってのって見た事無いなぁ」そりゃ、ファンじゃないならそうだろうし。

「すまないのだが、そもそも私はスターウォーズの話はしていないし、私もスターウォーズはよく知らない。親子で戦うとか何か光る剣でブンブンしてるぐらいのイメージしかもっていない」うん、そんな感じだと思う。

「だいじょーぶ、私もそんな程度の認識だから、もうちょっと知ってるけど」

「おいこら。自分も知らない事で詰め寄ったのか。待って…ホントにしおり?何か私の知ってるしおりとあまりにも何か違うんだけど?」

「そういう事じゃないんだよなぁ。ル・カインを私たちは知ってる。スターウォーズはよく知らない。マナちゃんはル・カインを知らない。スターウォーズも知らない。だから、何なら知ってるかって。まあスターウォーズはどうでもいいよ、よくわかんないし」

「そうなのだ、知らない作品の話をしてもしょうがないのだ」


「で、銀河帝国の皇帝って?」

「あー、ほら、しおりも知らないじゃん」

「マナちゃんは黙ってて」

「ルドルフは銀河帝国の初代皇帝なのだ。何か色々あって初代皇帝になったのだ」

「色々って?」色々っていったら色々なんだよなぁ。

「色々っていったら色々だよ?何でそんな事もわかんないかな?」

「それ私がバカにされるとこ?」

「説明できるんだったら色々なんて言わないんだよ、普通?よくわかんない時とか説明が面倒な時とか、とにかく色々省きたいから色々って言うの。色々って言った人に色々って?って聞くのは相手を困らせるだけだからやめようね?わかった?」

「何で物分かりの悪い幼児に言い聞かせるみたいになってんだ。美瑠クン説明、出来るよね?美瑠クンは私の味方だよね?」味方とか敵とかそういう事じゃないのになぁ。

「味方とか敵とかそういう話ではないのだが、説明しろというのなら…ルドルフは軍人から政界へ進出した男なのだ。軍人としては英雄だったルドルフはその人気で政界に簡単に進出、才能もあって民衆に喜びで迎えられたのだ」へぇぇ、誰だか知らないけど、ものすごく独裁者くさいプロフィールだ。でも、説明されたら困るんだけど、私の説明が何だったんだって事になる。

「うん、で、美瑠クンは私とマナちゃんのどっちの味方なのかな?」

「味方とか敵とかそういう話ではないと言ったと思うのだが、敢えて言うなら豊島さんとは同志なのだ」マナちゃんの顔をちらっと見てみる。うわー、勝ち誇ってる。

「くっ、わかった今回はマナちゃんの勝ちみたい。色々は色々じゃない事もあるのかもしれない。でも、ルドルフが何者なのかとか興味無いし」大事なのはここだ、銀河帝国の皇帝とかどうでもいい、私が話したいルドルフはそんな人の事じゃない。


「別にしおりと勝負してるわけじゃないけど、まあ精進する事だね」むぅぅ、おかしい。そもそも美瑠クンとマナちゃんは仲が良いんだから、美瑠クンはマナちゃんに味方するに決まってる、この勝負…不利だ。でも、何の勝負してたんだっけ?

「それでルドルフに興味が無いのだとすると今日は一体何の話をしにきたと?」美瑠クンは私の話を聞いていなかったんだろうか。全く美瑠クンにもがっかりだ。

「ルドルフだよ、最初からそう言ってるんだけどなぁ」

「確かにそう言ってはいるのだが…」

「ああ、赤鼻?」まさかのマナちゃんから答えが出た。さすが親友と言っておこうか。

「それ、今日は赤鼻のトナカイについて語り合いたいなって」

「最初からそういやいいじゃん。ここまでどうでもいいルドルフの話でどんだけ時間無駄にしたか、ルカインとかスターウォーズとか」

「豊島さんの言う事は正論だが、雑談などこんなものでいいのではないか?何なら銀河帝国皇帝の話を続けるのもアリだとは思う。彼は民衆に支持され最終的には神聖不可侵の銀河帝国の皇帝になった。が、いくら民衆に支持されようとそうなるものだろうかとこういう議論もありだろう」ありかもしれない、けどそれは今することじゃない、今するべきは赤鼻のトナカイの話だと思う。だって今日はそのつもりで来たから。

「うん、マナちゃんの言うことも美瑠クンの言う事ももっともだと思う。だから赤鼻のトナカイの話をしよう。美瑠クンはトナカイの鼻の色は知ってる?」

「白いイメージがあるよね?」マナちゃんには聞いてないけど、まあよし。

「というよりそれは毛の色なのではないだろうか?」

「だよね?知らないけど」

「あー、やっぱり知らないでふっかけてきたんだ。先に調べておこーよ、自分でその話持ち出したなら」

「というか何でルドルフでトナカイの話をしているのだ?」あー、なるほどそこから話さないといけないのか。

「赤鼻のトナカイって元になった童話があって、そこに出てくるのが赤鼻のルドルフ」

「人間だったのか」

「いや、トナカイだけど?」

「では人間の名前は何なのだ?」

「サンタクロースじゃないかな?人間かどうか知らないけどさ」

「ああ、ルドルフはサンタが飼っていたのか。…飼っているのか?笑いものになっているのをずっと放置していたのか?」

「サンタは飼い主じゃないはず。ルドルフ達がどこの何者なのかは元の童話には説明確か無かったと思うよ」


「そもそも何で笑いものになってたのか、だね。鼻の色?赤い鼻はそんなにおかしいかな?」私が気になっていたのはここだ。ルドルフは何を笑われていたのか。鼻の色が赤いっていっても、血の色が赤いんだから皮膚が薄ければ赤くも見えるだろうし、毛の色だっていうなら、トナカイなら茶色だ、赤がそんなに特別おかしいわけじゃない。

「赤毛のアンは赤毛を嫌がっていた記憶があるのだ。つまり日本人とは赤に対するイメージが違うかもしれないのだ」むぅ、そういう方向で来たか、そういう方向の論議は望んでないんだよなぁ。

「ただ単に誰か下に置きたかったんでしょ、みんなが。で、自分達と違う赤い鼻持ってるから、とりあえずそれをバカにしとけって」あー、マナちゃんはもっとダメだ、その方向は暗い、そんな哀しくなってくる論議がしたいんじゃないんだよ。

「うん、まあそういうのは置いておこう」

「じゃあ答え言っていい?赤いから笑われてたんじゃなくて、真っ赤でピカピカしてしかも大きかったから。ギャグとしか思えない鼻だったから。これが正解、原作のね」えーーー?

「原作読んだ事あるの!?」

「あるよ、霧の夜に見通し悪くて飛行機とぶつかりそうになったり苦労しながらトナカイのソリでプレゼント配ってたんだけど真夜中になっちゃうとホントに光が無くて、これじゃおいぼれの身じゃ朝までに間に合うのかって心配してたら…不注意で転んで怪我しちゃうし、椅子だと思ったらキッチンシンクだし」待った待った待った待った。

「ちょ、それは…何の話なのかな?あわてんぼうのサンタクロース?」

「赤鼻のルドルフ」本気で?

「ルドルフ関係ないじゃん。その流れからするとこの後にルドルフ出てくるんだろうけど。おじいちゃんに無理させんなって話だよ、それ、もうただの?」

「確かに老人虐待なのだ、おじいちゃんに何をさせているのだって感想にしかならないのだ」だよね!?

「そう言われても私が作った話じゃないし。続きいい?結構気になるよね?」意外と気になる。もっと短い話かと思ったら主役サンタなの?

「もうよたよたになってトナカイの子供の部屋に入ったんだけど、カーペットかな?敷物につまづいちゃってさ」また?

「おじいちゃん無理するななのだ。朝起きたらサンタの死体があったとか最悪の目覚めなのだ」

「もうルドルフいるいない関係なく仕事無理じゃない?」

「いや、そこよりトナカイの子供の部屋とかそこにツッコめお前ら」ああ、そういえばそこからもうどうかしてるのか。

「ちょっと現代だとジェンダーがどうとか言われそうだけど、サンタはおじいちゃんだから、相手が男の子か女の子か見極めないといけなくて、寝顔を確認して女の子なら人形、男の子なら電車のおもちゃ…トナカイの性別を顔で見分けられるのかとかトナカイが電車のおもちゃで遊ぶのかとか、まあそこは置いておくとして。次の部屋に行ったらなぜか明るいのね」

「出た赤鼻なのだ」

「ルドルフって子供だったんだ。サンタにプレゼント貰う側とは思ってなかった」

「ベッドがぴかーーって光ってて、もうサンタにっこにこで、これなら性別間違えようがないって。ちなみにふざけて表現してるんじゃなくて、原本通りだから。原文と挿絵そのままだから」

「でも、手元にあるわけでもないし記憶間違えかもしんないよ?」

「それはそうだけどさ。でも、サンタ超いい笑顔だったのは確か。サンタにっこにこじゃんって思ったから、そのページ見て。でも、その部屋出たらまた真っ暗で憂鬱すぎ。ここで超ひらめいたおじいちゃん。起きろ起きろと寝てるルドルフを揺さぶり起こして、「もう外霧出てるし真っ暗だし道に迷うし」って愚痴たれて「このままじゃ子供たちが目をさましちゃうんだよ」って、ルドルフ叩き起こしておいてどの口が言うかっていう」

「あのさ、マナちゃん…」さすがにそれは無いと思うんだ。調子に乗って創作してる気がする。

「ウソ言ってないからね?ほぼ原本通りだし、これで」

「いやさすがにルドルフ叩き起こすとかそれは…ちょっと検索してみるのだ」

「勝手にどうぞ。サンタは、巨大なピカピカした鼻サイコー、助けてくれってルドルフに助けを求めたら、ルドルフクンは器用にサンタ助けてるだけだから心配ご無用って書き置き残して」

「余計心配するよね、そんな書き置き、本人の筆跡だとしても。っていうか何で作者わざわざトナカイにしたのかもうわかんないんだけど、マナちゃんがウソついてないならだけど」

「ついてないって。あの手で器用に書き置き残したの。心配すんなって。朝起きて息子の部屋に行ってそんなのあったら即警察に電話だけどね」

「驚きなのだ、さっぱり原文が見つからないのだ、著作権切れてない?意外と新しい?」原文、原本探しは美瑠クンに任せておこうか。


「で?」

「ソリはルドルフクンが先頭にけん引して無事サンタは仕事出来ました、これでおしまい。光っていようがいまいがサンタよぼよぼだけど、何かルドルフの鼻見ると幸せになるみたいだね」

「ルドルフ君はどうやって帰ったのかな?つまり…なんていうかイジメられてた少年が自分が努力したわけでもなくふって沸いた幸運で英雄になったっていう話?」ラノベだ。これは何の力も無いクセに自分はそんなわけないんだって甘えたお子様たちが逃げているラノベと全く変わらない。ただ異世界に行かないだけだ。

「だね、昔からみんなこういう話が好きなんだよね、結局。シンデレラとか。不幸で泣いてたら何か魔法使いが助けてくれました、無いな」

「でも、美瑠クンに助けられたんだよね、マナちゃんは?」

「それは助けられたの意味が違いすぎるんだけど」これで、顔赤らめてたりしたらからかったんだけど…ホント美瑠クンとマナちゃんの関係は全然わかんない。

「見つからないのだ。まあ別にいいのだ、多分豊島さんはホントの事を言っているのだ。ただ、降ってわいた力でも何でも活躍出来ればやっぱり嬉しいと思うのだ。それで他人を見返すとかやり始めたらどうしようもないというだけで。それは青いタヌキの道具でいじめっこに仕返しする子と変わらないのだ。それは自分の力ではないのだ」

「たださ、そもそもこれ人間に置き換えて、ルドルフってそんなに見直されれる?お前の鼻、赤くてデカくてピカピカしてんだよって言われててさ、サンタにその鼻、道案内に最高じゃんって使われて。…見直すかな?」

「トナカイ界ではサンタに使われるのは名誉なのだ、多分」

「わかんない世界だなぁ」

「ここまで極端な話じゃないにしても人間に置き換えたとして、やっぱり見直さないでしょ。身長の低さをバカにされたとしてさ、その身長の低さが役に立ったとかって事例見せられても、バカにしてる人たちはムキになるだけでしょ、多分」

「弱者が他人を見返す話なら、それは与えられた力だとか偶然その人の何かが役に立つとかでは多分ダメなのだ。勝手に押し付けられた力なんて迷惑なだけなのだ、下手したらそれが自分の力と勘違いしてしまうのだ」

「まあ、与えられたとしても力は力だよね、それを誇っていいかどうかはわかんないけど。ただ私はそういう真面目な話したいわけじゃないんだよ、わかるかな?」


 今日も結構楽しく話す事が出来た。ただやっぱり2人の関係は気になってしまう。帰り道それとなく、ううん、はっきりと聞いてみた。

「マナちゃんって美瑠クンの事どう思ってる?2人の関係よくわかんないんだけど、未だに」

「面白い子だなって思ってる。もしかして男女の関係みたいに思ってる?最低でも今のとこお互いにそういう感情は無いよ?」

「美瑠クンはそうだろうね。結構マナちゃんの事不思議と信頼はしてるみたいだけど、恋愛感情的なのは伝わってこなかったし。でも今のとこってことはマナちゃんは少しは意識してる?」

「どうだろうなぁ。アレを恋愛対象として見る日が来る気はぜんっぜんしないけど」アレとかヒドいけど、確かに美瑠クンはそういう位置づけに置ける子ではない気はする。でもだとすると美瑠クンとマナちゃんを結び付けてるものって何なんだろ。仕事仲間って…。

 意外と原作知らない人多いのではないかと。美瑠は見つけられなかったみたいだけど、普通に原本はネットにあるので興味あるなら見てみるといい。

 ただ、ホントに豊島マナが語った通りの内容でしかないんだけど。

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