3話 乳母
それから、数日で、俺は、だんだんと、状況が掴めてきた。
①ここは、日本の戦国時代であること。
②俺は、織田信長の息子、「織田信忠」(奇妙丸)になってしまったこと。
③まだ、生まれて間もない赤ん坊の状態であること。
いきなり、言葉を話しはじめては、流石にまずいと思ったので、
しばらくは、適当に赤ん坊の真似をしておくことにした。
そうこうして、ひと月が立つうちには、館の状況が段々と分かったきた。
・ 俺を産んだ母は身体が弱く、私を産んでから、ずっと寝たきりであること。
・ 俺を育ててくれているのは、乳母の滝川殿であること。
・ ここは清州城の中の館であること
・ 父(信長)は今川との戦の準備で忙しく、この一月、顔を全く見せないこと。
滝川殿は、スラリとした美しい人で、実の母の友達らしい。
教養もあり、高校の先生だったら、さぞかし学生たちにモテただろうな、と思う。
初めは、滝川殿の胸に吸い付いて、母乳を飲むすることに抵抗があったが、
慣れというものは恐ろしいもので、最近は何とも思わなくなってきた。
このまま、館で平和にダラダラと過ごしていたいが、どうやら、そう簡単にもいかないみたいだ。
館は、今川と織田の小競り合いの話で持ちきりで、父の信長も小競り合いに出かけたり、
軍議と呼ばれる会議をしていたりと、相当忙しそうだ。
ただ、生まれて1ヶ月の赤ん坊に出来ることは何もないので、結局、ダラダラと日々を過ごすことになってしまった。