第4話 どうして
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女子の中等部は10歳から始まる。中等部といっても初等部は存在せず、貴族は幼い頃から家庭教師を雇っている。そのため、私は生まれて初めて学校に行く。正直心配しかない、ドーラとは仲良くなれたけど他の貴族と上手くやれる気は全くしない。
登校初日、重い腰を上げて学校へと向かう。貴族たちが集まる学校、トレイディア学院は敷地面積10万平方メートル。あの東京ドームでいうと、2個分くらいだろうか。
入学式が終わり、教室に入ると周りからの視線を感じた。
「さすが王族、綺麗なお方ね。」
「そう?平民上がりに分相応な顔じゃないかしら。」
などと小声とは思えないボリュームの声が聞こえる。
どうやら私の待遇に関しては賛否両論あるみたいだ。覚悟していたし、肯定派がいるだけましか。
先生が入ってきて自己紹介を始める。
「私のことはミスダリアかダリア先生と呼んでくれ。
突然だがこのクラスに転入生が入ることとなった。入れ。」
転入生?入学式に?
「・・・」
先生が廊下に出て、誰かと言い争いを始めた。
5分後、先生はある人物の首根っこを掴み教室に入ってきた。
「この学校の事はこいつに聞け、これでも高等部だ。」
「あの、ダリア先生そろそろ下ろしてくれませんか?」
「ああ、すまない。」
ダリア先生はその人物を解放して、私たちの方を向き語り始めた。
「今年度から一人の先輩が後輩に学校の事を教えるという方針でな。
ふざけた政策だが従う他ない。心配するな、先輩の中でも扱いやすそうなのを連れてきた。
こき使ってかまわん。」
皆、目を丸くし全く事態が飲み込めていないようだった。
それもそのはず、その先輩というのはユークス・ゴールド。この国の第3王子なのだから。
「ま、あれだ。よろしく頼む。
ん?」
ユークスは私の方を見て、微笑んだ。
その笑顔はずるすぎる。
「席をどうするか。」
「先生ー、私の隣空いてます。」
「いえ、先生私の隣が空いてますわ。」
生徒達はここぞとばかりにユークスに近づこうとしている。ま、無理もないか。皆、この国の王子様と結婚したら幸せだと思ってるだろうから。
「全く、これではいつまで経っても決まらんな。」
「おい、ユークス。お前が決めていいぞ。」
「いや、丸投げしないで下さいよ。」
ユークスはクラスを見渡し、少し考えた様子を見せ、頷いた。
「先生、ここはやはり一番後ろの窓際の席がよろしいかと。」
「なるほど、お前には教壇の真ん前の席をプレゼントしてやろう。」
「ええ?そんなーーーー」
こうして、ユークスは1ヶ月ほど私と同じクラスになった。
昼休みの時間、ユークスは周りからの誘いを断り、偶然隣になった子と私を誘ってご飯を食べることに。
「じゃあ自己紹介からだな、俺はユークス。好きな食べ物はカレーとオムライス。
尊敬する人物は二人の兄さん、宝ものはウチの妹。よろしくな。」
カレーとオムライスって小学生か!まーしってたけど。
ん?ちょっと待って。今、私を宝ものって言った?全くこれだから天然人垂らしは。
「私はナーザと言います。平民の出なのでとてもお二人と釣り合うとは思えません。
私、別の場所で食事を。」
あー特待生の子なのか。平民でも優秀な人材はこの学校に入れるって聞いたけどこの子が。
「え?食堂以外にも良い昼食スポットが?
よし、そこ行くぞローズ。」
「う、うん。」
ナーザさん、ウチの兄にはそういうのは通用しませんよ。
こうして校舎の連絡通路にあるベンチでご飯を食べることに。
「私はローズ。好きな食べ物は白米。好きな言葉は一人は皆のために。
よろしくお願いします。」
「あ、はい。さすが王族の方ですね、素晴しい言葉選びです。」
「ナーザちゃん、それは違うぞ。ローズがこの言葉を好きな理由はな。」
「この世はだれか一人が犠牲になって他の皆が楽になっている場面が多いというのは綺麗な言い
方していて素晴しいなって。」
「え?んっと、、、え?」
「うん、分かるよその気持ち。
俺も初めて聞いたときは何言ってるか分かんなかった。」
えーーーー。私としては世の中の心理をついた良い言葉だと思うのに、なぜここまで引かれてしまうのか。
ナーザはお母さん想いの良い子で、よく家の話をしてくれた。だんだんお互いの事を話すようになっていき、私たちは仲良くなることができた。それもユークスのおかげかも。なぜか彼がいると場が和んでしまう。
学校に行くのが楽しみになっていたそんなある日。
事件は起きた。
第3王子 ユークス・ゴールドはナーザに毒を盛られたという事件。
急いでユークスの元へ向かうと、そこにはベットで横たわる彼の側で泣き崩れるナーザの姿があった。